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第14話side齊藤河南
「イキよったで!」
「とんだ淫乱じゃねぇか!」
また、下卑た笑いをする髭ちょこたち。
「よしよし、とりあえず正気になれる状態にしただけだからな。お前は淫乱なんかじゃねぇよ」
「う……ふぇ……ぇん……」
「泣くな泣くな。アイツらにそんな可愛い表情をこれ以上晒すな」
泉先輩は僕を抱き上げ、優しく頭を撫でてくれる。それはもう、愛でてるんじゃないの?と聞きたくなるくらいに。
それが心地よくて、今だけは髭ちょこたちの存在が雲散霧消になっていく。
和やかな気分にしてくれるし、気持ちも掬い取ってくれる。
やっぱり僕の理想の人……__!?
僕の近くのテーブルが振動した。
それは、けたたましい爆音までの叩きつける音。
ヒヤッとして、僕は音の根元をちらりと盗み見る。
それは泉先輩の脚だった。
この音に消えかけていた髭ちょこたちの存在が浮上してきた。
「ちょ、いきなりなんだよ!」
「お前ら……退学な」
「はあ!?」と怒り半分驚き半分で、寸分違わぬ反応を見せる髭ちょこたち。
僕も泉先輩の怒りスイッチにはびっくりだ。
「齊藤河南に強姦の疑いで逮捕されてもいいのだが……俺は生憎お人好しでな。ああ、刑務所に行きたいんであればそう言え、心置きなく刑務所生活をさせてやる」
「はは、何いっちゃってんの?結局良いとこ持ってったの、おめぇじゃねぇか!」
反論するプリン頭に、泉先輩の青筋がピキピキと音をたてながら、それでもいたって普通の表情で「合意のない行為こそが強姦だろうが……」と一言。
地を這うようなドスの効いた声でも、僕は泉先輩の胸のなかで鼓動をバクバクと高鳴らせていた。
多面的な泉先輩、カッコイイ……。
あられもない姿をしたままだということはすっかり忘れている僕なのだ。
だから、わざと胸の中にしまわれていたという、ジェントルマンな泉先輩に気付けなかった。
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