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第15話side齊藤河南

「お、お前、泉(せん)だとか言われてたな!てめぇこそ、コイツを犯すために荷担して、そ、そそ、そのまま良いとこ取りしたじゃねぇか!人のこと言えねぇし、そっちの方がたちわりぃぞ!」 「そ、そそうだ!合意がねぇって、それはお互い様だろ!」 「何を言っている。もともと齊藤は俺のモノだ」 そう言うと、泉先輩は胸にしまっていた僕の顎をクイ、と持ち上げて。 「ふん……ぅ……んんん!?」 深い接吻をかました。 歯列をなぞられ、舌を絡めとられ、完全に腰砕けな僕は、すっかり堕ちた顔。 「ふ……」と口角をニヤリと上げて僕を見る。 僕はそれでまた、とろけてしまう。 「こんな可愛い表情を、お前らにしたか?いや、俺が見ていた範囲では喚いてたぞ」 ちょ、泉先輩。 僕恥ずかしすぎて、沸騰しそうなんですけど! あの人たちは僕たちが付き合っている証拠としてキスしてたように見えてるけど、実際僕の片想いがバレてるも当然だから! 「そんな違いもわかんねぇのか……そうか……だったら」 「三船」泉先輩は副会長の名を呟く。 「ああ、ちゃんと一部始終は撮れてる。あとは証拠物として警察署に出すだけだ」 「入り口付近のテーブルで一悶着なんて、馬鹿かお前ら。かなり撮りやすくて逆に怖かったわ」ビデオカメラを手元で転がして遊ぶ三船先輩。 ぐうの音もでない、とはまさにこの事。 それに、三船先輩の登場で、完全に動揺している。 もしかして、と三船先輩をみたあと振り返り泉先輩を見る。 「残念だったな。齊藤河南は俺、東郷泉のモノだ。お前らの所業、落とし前はきっちりさせてもらうからな」 泉先輩はどこから取り出したのだろう、黒縁眼鏡をかけ、ある程度髪の毛を整え、完璧な「生徒会長」に変身していた。 髭ちょこたちは、歯をくいしばって、警戒心を露にする。 どんだけ泉先輩たちはスゴいんだろう。 二人を交互に見た後、観念したのか項垂れる。 漠然とした疑問が生まれるほど、髭ちょこたちの驚嘆にはこっちも驚かされた。 男子校だから、それなりの実力行使というのは健在なのかな。 うわ、泉先輩が実力行使で不良に殴りかかる(その時は爽やかな眼鏡無しの泉先輩)なんて、サイコー……。 回し蹴りなんか、脚長くて綺麗な弧を描きながら、悪党が倒されていくんだろうなぁ。 僕の行き過ぎた妄想を知ってか知らずか、よりいっそう僕を抱き締める力が強まり、ふと泉先輩を見上げる。 「そろそろ服を着ようか。これ以上裸体を晒すのは俺が我慢ならない」と微笑まれる。 そらにドキリとして、あわてふためきながらも散らかされた制服をかき集めるべく、泉先輩の腕から離れようとする。 だけどそれは叶わず、強く抱き締められる。 「はいはい、泉。俺まで睨むな。ちゃんとコイツら連れいてくから、服着せてやんな」 「てめぇら、覚悟しとけよ」三船先輩はギロッと睨みをきかせて、二人の耳が千切れそうな勢いで引っ張っていった。

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