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第19話side櫻田勇也
小さいヤツを横抱きに抱えて保健室を探しながら駆け回った。
そうしてようやく辿り着いた保健室は、一年の教室がある校舎だった。
上級生が一年を襲ったり、集団リンチしたりする事件が毎年あるらしく、一年と上級生の校舎を分けたのも、一年の校舎側に保健室を設置したのもそれが理由らしい。
今ベッドで休んでいる小さいヤツも、恐らく襲われかけて逃げてきたのだろうと推測された。
そりゃ、上半身裸でブレザーを羽織ってたし、手に持ってたシャツなんかボタンは無いし、そもそも無惨にも破けているし。
極度のストレスから、無意識的に意識を手放したんだろう。
自力で逃げてきたんだろうな。
俺はコイツの大健闘を称えるかのように、髪を流したままの白い艶のあるでこを撫でた。
俺の手があまるほど、ソイツの顔は小さかった。
俺がでかすぎるのもあるかもしんねぇけど、コイツは本当に小さい。
160あるのか?
いや、ないだろ。
ただ、コイツが心配ということだけは明確だ。
俺と同じ目線でコイツを見る先生に、ちょっと嫉妬した視線を送っていれば思い出した。
「先生、俺コイツの側にいてやりたいからさ、先生が俺の代わりに伝言頼まれてくんね?」
「何で俺なんだよ!代わりってもお前ダチいんだろ」
「急ぎだから。ね、ささ、三年のバレー部主将に櫻田勇也が入部希望って旨を伝えといて」
「生徒にこき使われんの久々だぜ……覚えてろ、櫻田勇也」
「はいはーい、よろしくな~」
舌打ちしながら先生は保健室を去った。
何だかんだコイツが心配なんだなぁ。
か弱いイメージしか持てない第一印象だしなぁ。
俺はコイツが目が覚める午後四時過ぎまで、ベッドに横たわる姿を見続けていた。
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