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第22話

放課後、対面式後に部活紹介を再度させてくれという幾つかの部活に、その時間を設けることが可決された旨をいちいち伝え回らなくてはならない。 非効率的なまどろっこしさだ。 その中に「バレー部」が入っているのだから不愉快極まりない。 強豪なら人なんか集まっているんじゃないのか。 「デカブツ」一匹いりゃ上等だろう。 そんな憎まれ口を内面でぐちぐちと思っていれば、足は自然と体育館へ向かう。 三船は早く帰りたいのか、共に行動したくないのか(主に後者が正しい)手分けして回っていた。 バシンバシンとボールを叩き潰す音が木霊する。 ガチムチとやらの集まりがボールを叩き合う、殴り合いの部活か。 館内へ入るのすら億劫だ。 むさ苦しい男たちに加え、そこに青春とかいて「キレイなあせ」と読む彼らのむんむんと立ち込める男臭が漂っていると思うと、吐き気すら催してくる。 だが、仕事は仕事で、俺はここの学校を統べる者。 意を決して、入り口の玄関に足を踏み入れる。 意外と臭いはしない。 予想以上に練習に盛り上がっているのは、聞いて感じるが。 バシン、と床にボールがつく度喜びと悔しさの声が窺える。 強豪なだけあって、練習であっても一球入魂、というわけか。 久々に他人を褒賞しながら、階段を上がり二階のバレーコートへ行く。 なぜ、俺は二階から行かなかったのかと、遠回りしてきたことを悔やむ。 「櫻田ァッ!ナイサー!」 「ウスッ」 「一本決めてやれー櫻田!」 どうやら俺は、体育館に入るタイミングを間違えたようだ。 どうしてデカブツの名前を今ここで知らねばならないのか。 しかも不本意でだ。 それに気に食わないのは、パッと見でもわかる、ましてや素人の俺でも分かる上級生からの期待の目。 三船の言うことは、本当に的を射すぎていて、その情報量が俺に向かって攻撃されたらひとたまりもないと、毎度畏怖の念を抱く。 一応部活は今日からのはずで。 ものの数時間ほどで三十人はくだらない大型チームに溶け込むコミュニケーション能力の高さも忌々しい。 要は、最後にけなしてはいるが、ヤツの爽やかさは伊達ではない、ということだ。 そんなヤツが純粋な齊藤を気に入るのも、男が受け入れらるようになるのも容易で頷ける。 俺は主将に伝えるべくなるだけ平常心を装い、サーバー(名前もデカブツすらも呼びたくない)の後ろをゲーム中であるにも関わらず歩いていく。 せめてものアピールだ。幼いがな。 通りすがり様に舌打ちなんて、ガキの極みだ。 ベンチにいるであろう主将の元へ、サーバーの後ろを通り、椅子がおいてあるベンチ側に歩く。 はたと、俺は足を止めた。 男だらけで、しかもガタイが特に良すぎる奴等が数名いる間に座っているヤツ。 ベンチ側のラインを歩いてすぐ、分かった。 デカブツ(結局忌々しい名前は呼ばない方で安定した)の好意有り気な仕草を気付けたのはなぜか。 そんなの――。 絶句している暇はない。

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