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第8話

慶一の隣に座り、両手で大事そうに包み込まれたマグカップを奪ってその体を抱え上げ、自分の足の間に座らせて。後ろからすっぽりと、華奢な体を包み込む。 ホットミルクを奪われたからか、先ほどまでの激しい情事を思い出したからか。慶一は秋青へ体を預けるくせに、拗ねたようにぷいっとそっぽを向いている。 「……さっきは、むちゃくちゃしてごめんね」 久しぶりだったからつい、と言い訳し、甘えるように慶一の首元に顔をうずめる。 はあ。と深くため息を吐いて、まるで仕方ないとでも言うかのように、慶一は秋青の頭を撫でた。 そのまま薄い首の皮膚をかぷっと()むと、調子に乗るなと言わんばかりにむんずと髪をつかまれ、引っ張られる。 「ちょっと、痛いって。痛い痛い」 よくよく考えてみれば、体を繋げたのももちろんだが、こんなふうにじゃれ合うように慶一に触れる時間を、ここ最近はすいぶんと持てていなかった気がする。 就職してから秋青が忙しくなったのもあるが、新刊の発売を控えている慶一も、最近は慌ただしく執筆に勤しんでいたからだ。 愛しい人が今、この腕の中にいる。そんな幸せを噛み締めるように、秋青が再び自分の首元に顔をすり寄せてきても、慶一は今度は何も言わなかった。 こんな時間が、いつまでも続けばいいのに。 そんな想いを、互いに心に抱きながら。 「ねえ、慶一さん。俺、慶一さんに言いたいことがある」 顔は見えないけれど、ちゃんと耳を傾けてくれているのを秋青は知っている。だから安心して、いつかのようにぽつりぽつりと語り始める。

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