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第11話

「いずれ、先生の本の装丁を手掛けてくださるとか?頼もしいです」 その日、また出直しますと玄関へ出た帰り際、慶一の担当編集者は秋青ににこりと笑いかけて言った。 秋青がこれまで、いく度となく欲してきた大人の余裕。慶一の隣に並ぶためになくてはならないと感じてきたものを、いともたやすく眼前に突き付けられて。 慶一を支えるには未熟だ、力不足だ、そんな現実を突きつけられるのかと思えば、かけられた言葉は秋青の予想だにしていないものだった。 「先生、その“いつか”をそれはそれは楽しみになさっていますよ。これでしばらく先生は小説家を辞められないと、私も安心しているところです」 穏やかに微笑む彼に秋青はそのとき、嫉妬も焦燥もなくただ純粋に、慶一を心底から理解し支えてくれる人がいることを嬉しいと思ったのを、今でも覚えている。 「とかく闇に捕らわれやすい先生にとって、あなたは道しるべのようなものだと思います。私や先生にはまぶしく見えるほどの光を放つこと、それは私たちよりいくつも年若いあなただからこそ、できることかもしれませんよ」 ――どうか、いつまでも先生の希望であり続けてください。 秋青にとっては慶一こそが、光であり希望だった。自分が慶一にとってのそれになれるなんて、今まで一度も考えたことがなかったけれど。 どうかいつまでも。祈りを込めて自分に投げかけられたその言葉を、秋青はそのとき、決意と共に胸に刻み込んだのだ。 もらうばかりじゃなく与えられるのなら、「慶一を苦しめているのが自分ならばいっそ……」などともう、ためらうことはなく、あなたを俺のものにしたいと言える。

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