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コツコツと床を叩くヒールの音が近づいてきてアオキは唇を噛み締めると息を止めた。
鼓動の音だけで気づかれてしまうんじゃないかと思うくらい、心臓がばくばくと鳴っている。
「あれ?紅鳶さんですか?」
相手が紅鳶の姿に気づいた。
幸い積み上げられた段ボールが壁になっていて相手からアオキの姿は見えないようになっている。
しかし万が一相手が傍まで近づいてきたらに確実にバレてしまうだろう。
こんな乱れた姿を見られたらどうやっても言い逃れることはできない。
お願いだからこっちに来ないで。
アオキは必死に祈りながら紅鳶の胸の中で小さくなっていた。
「こんなところでどうされたんですか?」
紅鳶に訊ねるその声に聞き覚えがあった。
同じウエイトレスであるマツバツバキだ。
アオキより年下だが、ここでの仕事は彼の方が長く先輩だ。
いつまでたっても初 さの残る純真さと、まるで小動物を思わせる愛くるしい見た目で、一部の客たちからひっそりと人気のあるウエイトレスだった。
健気で努力家の彼とはアオキも仲が良い。
しかし仲がいいからこそこんな姿を見られるわけにはいかない。
コソコソと隠れてこんな場所で淫らな事をしているだなんて、万が一にもマツバに知られたら彼はきっともうアオキとは仲良くしてくれないだろう。
アオキは居ても立っても居られなくなった。
「休憩中だ。たまには俺も一人でゆっくりしたくてな」
紅鳶はそう言うとアオキの背中をそっと撫でてきた。
中途半端に放り出されていたアオキの肉体はそんな些細な感触にも感じてしまいビクッと震えてしまう。
「あ…そ、そうですよね、紅鳶さんいつもお忙しそうですし」
「マツバは何をしにきたんだ?」
背中を撫でていた手のひらがゆっくりと下へ滑り落ちていく。
その手はアオキのスカートの中に潜り込むと、白桃のようなアオキの双丘をいやらい手つきで撫で回してきた。
アオキは思わずヒクリと喉を鳴らす。
しっとりとした肌の感触を確かめるように一通り撫で回した後、両手で強く鷲掴みされ谷間を押し広げるように割り開かれた。
後孔を暴くように拡げられてギョッとする。
思わず紅鳶を見上げると、こちらを見下ろす彼の眼が悪戯と獰猛さを含んだ妖しい光を湛えているのを感じた。
何かを企んでいるような表情に嫌な予感がする。
首を左右に振り、眼差しとジェスチャーで制止を訴えるが紅鳶は軽く口端をあげるだけだ。
「オーナーに書類を取ってくるように言われたんです」
「そうか。どんな書類だ?」
紅鳶はマツバと何食わぬ顔で会話しながら、アオキの足を開かせると片足を担いできた。
まさかそんな…
アオキは目を見開くと「だめです」と口の形だけで訴えた。
さっきまで指で弄られていたヌルつく窄みに、いつの間に取り出したのか彼の灼熱の塊が押し当てられているのだ。
こんな状況で挿れようとしてくる紅鳶も信じられないのだが、それよりも驚いたのは自分の肉体だった。
後孔に充てがわれた男根の太さと大きさを感じて期待に中が戦慄き、それを早く飲み込みたくて仕方がないと疼いている。
段ボールの向こう側にはマツバが居るというのに、だ。
自分のあさましい肉欲に殆 呆れてしまう。
「その書類なら入口の棚から二列目、上から三段目にあるはずだ」
「ありがとうございます、探してみます」
足音が遠ざかっていく。
マツバの動きを目で追っていた紅鳶は身体を密着させてくると、アオキにだけ聞こえるトーンで囁いてきた。
「挿れるぞ。声は抑えてろ」
「…はぅ…っぁ…そんな…で、できません…っ」
アオキも小声で必死に訴えた。
彼に挿れられて声を我慢できたためしは一度もないし、そんな事できるわけない。
「そうか。じゃあこれは欲しくないんだな」
昂ぶった男根を擦り付けられながら耳朶を甘噛みされて、アオキは小さく喘いだ。
ずるい。
そんな風にされたら断れるわけがない。
耳に差し込まれた舌がクチュリと濡れた音をたてて、アオキのなけなしの理性を挫こうとしてくる。
「だめ、っ…っぁ」
「だめ?ここはだめとは言ってないみたいだが」
パクパクと開閉する下の口を揶揄されてアオキは真っ赤なると唇を結んだ。
きっと彼には何もかもお見通しなのだろう。
誘惑に負けて揺れるアオキの腰を、大きな手ががっちりと掴んでくる。
「挿れるぞ」
紅鳶はそう言うとアオキの返事も聞かずに昂りを突き立ててきた。
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