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バレンタインss4
アオキは普段紅鳶から特別指導を受けている。
いやらしい事と言われればまぁそうなのだが、紅鳶が出来損ないのアオキの為にあえてやってくれている事だ。
しかしいつもなら営業時間が終わってからや休憩時間で、こんなイベント真っ只中の営業中にされたことはなかった。
なぜなら、従業員同士でこんな事をするのは禁止されているからだ。
オーナーはルールに厳しい人物だ。
見つかればたとえ売れっ子だろうがペナルティーは避けられない。
紅鳶だってそれはわかっているはずなのに…
なぜだか少しも耳を貸してくれない。
このままじゃ本当にまずい…
アオキは次第に焦燥に駆られはじめた。
今日はずっと中途半端に身体を嬲られっぱなしなため、肉体は疼いた状態にある。
こんな燻 った状態でもしアソコに触られたら、確実に歯止めが効かなくなってしまうだろう。
しかも相手が紅鳶だとますますまずい。
通常時でさえあんなに感じてしまうのに、こんな熱を持て余した状態で紅鳶に少しでも触れられでもしたら…
想像したアオキはブルリと背中を震わせた。
しかしアオキの不安をよそに、紅鳶は容赦無く尻を左右に割り開いてくる。
今日はまだ一度ももらえていない場所が、その僅かな刺激だけで期待に蠢いた。
「ま、待ってください紅鳶さん…誰か来ちゃいます」
高ぶる心臓を抑えながら、アオキは何とか紅鳶に制止を促した。
ここは休憩室。
いつ誰が来てもおかしくない場所だ。
外ではイベントを楽しむ客や、対応に追われる従業員でごった返している。
その中には紅鳶が来るのを待っている客だっているはずなのだ。
「紅鳶さん!!ダメですっ」
アオキは普段より声を張ると、紅鳶の手から何とか逃れようと身体をよじった。
すると、再び舌打ちが聞こえてきた。
「何だ?そんなに必死になって…まさか見られたくない相手でもいるっていうのか?」
唸るような低い声色に思わず身が竦む。
「え?」
「やっぱりそうか…スタッフの中に見られたくない相手がいるんだな!?」
紅鳶はそう言うと、その逞しい肉体でアオキの身体を更に強く押さえつけてきた。
ガタガタとロッカーが煩い音を立てる。
そこでようやく気づいた。
紅鳶がかなり怒っている事に…
しかし、アオキは紅鳶に対して何かをしてしまった覚えが少しもない。
半ばパニックに陥りながら、アオキは今までの行動や言動を思い返した。
休憩室に入ってきて…それで…えっと…
「誰だ」
「え?」
「そいつの名前を言ってみろ」
名前をと言われても、アオキには何の事だかさっぱり見当がつかない。
誰のことで、何のことだろうか。
答えられないアオキに向かって紅鳶はさらに畳みかけてくる。
「なんだ。言えない相手か?それともそいつが助けに来てくれるのを待っているのか?」
「ち…ちが…っっ!!」
何かはわからないが違うと言おうとして口を開いた瞬間。
唇が乱暴に塞がれた。
肉厚な舌が歯列を割り潜り込んでくると、逃げるアオキの舌を捕らえ絡めとる。
「んんっ…んっ!!」
強引で性急な口づけの衝撃にアオキの背後にあるロッカーがガタガタと揺れた。
その音はアオキの僅かな理性に訴えかけてくる。
もしも今誰かがここに入ってきて、この状況を見られてしまったらどうする?どう言い訳するのか?と…
早く…早くやめてもらわないと…
アオキは焦燥に駆られながら紅鳶の胸を押し返そうとした。
しかし、鍛えぬかれた紅鳶の身体はびくともしない。
頭に酸素が回らなくなり次第にクラクラし始めた。
息を吸おうと無意識に顔を逸らす。
しかし、そんな隙さえも許さないというように口内を激しく蹂躙されてしまう。
強引に捻じ込まれた舌はアオキの思考をかき乱し、困惑をさらに深めた。
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