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来し方 14
ーー随分無感動な行為だった。
いつもこんな風だっただろうかと、激しく腰を打ちつけながらぼんやり逸は考える。
物理的な、刺激だけの。
(………どうだったっけ)
どれくらい前だったか、敬吾が疲弊しきっているので封じていた両手を放した。
敬吾が崩れ落ちないように強く腰を掴んで、欲望のままただそこを往復させてばかりいる。
敬吾といえば自由になった両手の間に横顔を埋め、悲しげに眉を下げてごくまれに小さく声を落としているだけだ。
それが、扇情的でもあるがなぜか少しだけ腹立たしい。
「ーー敬吾さん」
「ーーーーぅ、え…………」
揺らされながら、敬吾が素直に逸の方を見る。
何ぞ他のことを考えているのかと思って呼びかけたのだったが、逸に呼ばれた敬吾の瞳には安堵にも似た望ましい光が灯った。
それで溜飲が下がってしまい、逸は二の句を継がない。
ーーなんだよ。
敬吾がまた悲しげに視線を戻す。
(正気に戻ったかと思ったのに………)
一向に乱れない律動が落胆に拍車をかけた。
酒が入っている上一度出しているので逸はなかなか達しない。
それもまた敬吾を苦しめた。
いくら平素の逸を思い出して浸っても、実際されていることが違いすぎる。
どちらかというと敬吾を悦ばせることを優先して、それを逸が楽しむことが多いのだ。
それがこうも平坦に自分本位にされてしまうともう、時間経過もあってただ辛い。
敬吾の抱える熱も中途半端で、くらくらと生茹でにされている気分だった。
敬吾が目を閉じる。
(……俺思ってる以上にこいつのこと好きなんだな)
こんなことで実感するとは。
自分の間抜けさに、駆け足の呼吸の中でも呆れたようなため息が雑じる。
気分や愛情の差で肌の感覚がこんなにも変わるとは思いもしなかった。
激しく揺すぶられながら目を閉じ、敬吾はただぼんやりと、逸が満足するのを待つことにした。
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