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悪魔の証明 4

「んぅっ!!!?」 「敬吾さん………」 「や、馬鹿っ、何してやめっあっ!やめっ、んーーー……!」 そこから敬吾は必死で口を閉じた。 未だ快感の燻る体にそのやり様はあまりに刺激が強く、身を任せるのは恐ろしすぎる。 そうしてびくびくと震えて耐える敬吾の体を、逸は指一本で翻弄しながら呆然と眺めていた。 その指を性急に増やし、また更に掻き乱す。 「敬吾さん……綺麗、すごい可愛い…………」 「ぅるさいばかやめろっ、んぁっ……‼」 逸がものも言わずに指を引き抜き、敬吾はまたすぐそこに絶頂を見た。 ぞっとするほどの快感の波が間近にあって、寸の間、何が何だか分からなくなる。 その一瞬を知る由もない逸が猛り切った先端を押し当て、そのままぬるぬると押し込んでいく。 敬吾は目が眩むような思いがした。 「っ逸!待って今ダメっーーー」 「……?ごめんなさい、無理、止まんない……」 「ゃ………………!」 ゆっくりと重たく一番奥を突かれて敬吾が大きく仰け反る。 逸の腕に縋りながらその衝撃と快感に耐える、が、滑らかに引き抜かれ、もう一度突き上げられるといとも容易く間近にあった頂は降ってきた。 悲痛な声を上げて痙攣する敬吾を、やはり逸は呆然として食い入るように見つめている。 「ーーっ敬吾さん……」 「あ、っは……、んーー…………!」 「ああ……もう、敬吾さん……」 「んっ、んんっ………!」 次から次から溢れる涙を、逸が顔を寄せて舐め取った。 敬吾が苦しげに呼吸を詰めているうち、それは止まりそうにない。 「可愛い……、苦しい?ごめんなさい」 顔を撫でられ、敬吾はそれに縋り付くように必死で頷いた。 逸の手が首へ、胸へと降りていくとその度凄惨なほど体を撓らせ、息を呑む。 「……まだ気持ちいいの残ってる?」 躊躇いながらも敬吾は頷いた。 「うん、じゃあ……我慢しないで。それじゃ敬吾さんがずっと苦しい」 小さく嗚咽のような声を漏らす敬吾に、逸は唇を落とす。 頑なな唇を食みながらゆったりと腰を揺らすと、びくりと敬吾の肩が揺れる。そして必死で逸の首を抱いた。 「ん!ぅんーー………!」 「敬吾さん……力抜いて、ね?」 「ふ……ぅー……」 まだ涙の止まらない敬吾を全身で慰めるように、逸は唇を緩ませ、あやすように体を揺すった。 そこからまた溢れる快感が怖いようでも優しいようでもあり、身を任せてしまえと誘っている。 抵抗すればするほどその圧力は増して、敬吾は屈服した。 それもこれも、逸が悪い。 あまりに優しくて、暖かくて、甘えたくなるーーーー 「…………っふ、んぅー……、逸ー……」 「はい……」 敬吾の唇が離れ、逸の肩に埋まる。 その髪を撫で、くちづけると子猫のように逸の肌を吸いながら敬吾が小さく喘いだ。 我慢するのをやめたらしい。 痛々しいほどに艶っぽく、あどけなくて、逸はたまらない気持ちになる。 優しくしてやりたいが、滅茶苦茶に抱き尽くして壊してしまいたい。 「ん………っん、……んー……」 細く抑えた声を零し続ける敬吾の髪を、逸は狂おしく掻き乱していた。 その中に吹き込まれる呼吸は獣のように荒い。 「敬吾さん…… ……少し強くしてもいい?」 「え………、」 敬吾がその言葉の意味を捉え切るのは格段に遅かった。 肌の中にはまだ滞留しきった快感が火花を散らしていて、その最も深いところはじりじりと熱く脈打っている。 その熱はまるで逸の熱さが侵食しているかのようでもうたまらなかった。 痺れるように打つ脈も自分のものなのか逸のものなのか分からず、まるで、こんな体の奥深くまで、心臓まで掌握されてしまったようで、頭が働かないーー。 「…………へ?なに…………」 「ーーっそんな顔して……」 「あっ!……ぁーーーー………っ!」 堰が切れたように強く腰を振られ、敬吾が喚くように声を上げる。 必死で逸の首に縋り、呼吸だけでも取り返そうとするがそれもできない。 逸が動く度に熱が暴れ、広がって、気が触れそうだった。 確か、あまり大きく声を出してはいけないはず。それは分かるのだが、どうしてだったか。もうどうだっていいのではないか、だって、おかしくなってしまいそうだーーーー。 「んーーー……!んーっ、あ……っ逸っ、あ、っあっ……!」 「敬吾さん……」 凶悪な笑みを浮かべ、逸が敬吾の耳に唇をつける。 「ーー敬吾さん。俺は、めちゃくちゃ嬉しいんですけど……、声、皆に聞こえちゃうかも」 「ーーーーーー!」 「誰も、敬吾さんだとは、思わないと……思いますけどね?」 「っ、ーーーーーっ………!」 「敬吾さんのエッチな声、誰にも………っん、……聞かせたくないなあ」 かなりの範囲の能力を失った敬吾の耳に、逸の言葉の後半は聞こえていなかった。 ただただ最初の一言が頭を殴るように衝撃的で、恥ずかしくて。 敬吾はぶんぶんと首を振る。 「やだ、ーーーやだー、」 「ですよね?ごめんなさい、きついとは思う……、んですけど、」 一時鳴りを潜めていた涙がまたぼろぼろと頬を伝い始めて、しゃくり上げてしまうわ声は閉じた喉を押し上げるわで敬吾は恐慌に陥る。 子供のように咽ながら泣いた。 恥ずかしくて泣けてきて、その泣き声も突き上げるような喘ぎ声も必死で飲み込むのに、それでもまだ快感は怒涛のように襲ってくる。 耳元でただ興奮に浸った呼吸が荒ぶっているのに気づいたとき、やっと敬吾はそれがこの一人気持ち良さそうな男のせいだと思い至った。 「ふ……っんん……っ!なんっーーじゃあ、じゃあいっかいやめろよばかあっ…………」 「あは……、ですよね。ごめんなさい、無理で……」 「んぅ!んんっ、んーー…………!」 「っああ敬吾さん辛そう……ごめんなさい、でもその顔もすご、いそそる……………」 「ばかー……!おまえがっ、悪いんじゃんかっ、んー……!気持ち、よくする、から、んん………!」 「……………。ほんっともう勘弁してください」 敬吾の腰を思い切り掴み、一層激しく腰を振りながら逸は敬吾の喘ぎを口で塞いだ。 敬吾の目が見開かれ、すぐに悲痛に顰められる。 激しい快感とそれを昇華できない苦しみに、また涙が溢れ出す。 逸を受け止めるたびに腹も胸も激しく上下し、喉が波打った。 必死で縋った逸の背中には、短い爪がそれでも食い込む。熱く感じるほどに痛いが、どうしようもなく興奮してしまう。 激しい呼吸の合間に堪えようもなく溢れる苦しげな声、涙、幾度も肩甲骨に走る痛み、全てが、自分に由来しているのだから仕方がない。 乱れさせているのも、苦しませているのも、縋られているのも慰めるのも自分だ。 凶暴な支配欲が突き上げて、逸は上体を起こし思い切り深くまで穿ってその奥に吐き出す。 敬吾が必死に口を覆いながらも悲痛に喘いだ。 (……今のはほんとに音漏れちゃったかもな) 萎え始めるまでの短い間容赦なく揺すり上げてやると、もはや快感と思っているのかどうか、敬吾はただ切なげな嗚咽を漏らす。 そうして弓なりに体を撓らせ、不安そうに膝を体に引き寄せながら小さく震えて少ない精液を吐き出した。 (えっろ…………) 「っんー、んーーー……、」 未だ健気に口を覆っている手をそっと剥がしてやると、不思議そうに逸に寄越された視線は弛緩しきって溶けてしまっている。 「大丈夫ですか?」 問いかけても、聞こえていないのか全く反応しない。 「…………敬吾さん」 しばらくしてやっとひとつ瞬きをし、逸がほっと安堵したところで敬吾の顔はみるみる赤くなった。 ぎゅっと深く眉間に皺が刻まれて、その顔を枕に押し付けながら逸の顔を横ざまに押しやる。 「うぉ、敬吾さん?」 「……………っうるさい馬鹿犬…………っ」 「ごめんなさいー、ちょ、でもちょっといちゃいちゃしましょうようっ……」 「やだ!!」 「いでっ」 顎を弾き飛ばすように逸の顔から手を離し、敬吾は本格的に枕を抱え込んで籠城した。 頑ななその後頭部を、慰めるように逸が撫でる。 「……すみません、めちゃくちゃしちゃいましたね」 「………………」 「でもね敬吾さん」 「………………」 「こーゆーの、まな板の上の鯉って言いますよ。」 「!!!!!!!?」

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