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悪魔の証明 14
「っもう……!たまーにそうやってくっそ可愛いこと言うんだから!ほんっと怖いわ!」
「え? っえ?」
「ほら敬吾さん頑張って、起きて跨いでっ」
「ぅえぇ?何………」
「起こしますよ?掴まって」
「えっ、なに……んゃ、んーー……!」
敬吾の背中を抱いたまま逸が上体を起こす。敬吾も必死でしがみつくが思い切り中を抉られて悲痛に呻いた。
膝の上に敬吾を座らせるとそのまま抱き竦め、逸が唇を貪る。
溶けてしまいそうなほどにそうしていると、敬吾の呼吸が甘みを含み始めた。逸がにやつきながら腰を撫でる。
「……敬吾さん、中すんごい絡んできてる。今日キス大好きですね」
「ん、ぅ……だって………」
「もう。やっぱりショック受けてるじゃないですか」
むずかる子供のような敬吾の頭を撫でてやって、逸は眉根を下げてまた軽く口付けた。
「……ちゃんと言ってください。俺だって、慰めたいし好きなくらい上書きしたいんです」
「う……ごめん………」
「頼りないのかも知れないですけど……」
「や、いや……そんなことはないけども……」
「あるんですね」
「いやー……」
「ほんっと素直なんだからもー」
今度は強く敬吾の髪を掻き上げ、深く口付けると逸は額を付けて言い含めた。
「……じゃあ今度は敬吾さんが、好きなようにきもちよくして」
「ーーーーー……!」
「…………ほら」
敬吾の腰を掴み、逸が大きく揺すぶる。
仰け反りながらも促されるように敬吾が腰を揺らすと、逸はベッドに背をつけた。
「っ………!っはあ……っ、ん………」
「敬吾さん、可愛い………」
「んっ!んぅー……」
「あはは、すごい締まった……ーー敬吾さん、上下に動ける?抜き差ししてみて………」
「っ、ん……っあ、っ……!」
「上手……」
不服そうなベッドの軋みと堪えきれない嬌声が響く。
目に焼き付かせるようにとっくりと敬吾を見つめながら、逸は浅い呼吸を繰り返していた。
「……敬吾さん上手、すごい気持ちいい……んですけど、」
「えっ?ーーーっ?」
「っん…………、」
「んーーー……!」
背中に震えが走り、敬吾が猫のように体を反らした。
その奥で逸が痙攣している。
「っ、うそ、んー……!」
「あはは……、夢中になりすぎると、こうなります……」
苦笑しながら敬吾の腰を抑え、全て飲み込ませるように逸がそれを押し上げる。
そうしながら起き上がると敬吾が縋るように抱きついた。
質量を失い始めて逸のものが抜けてしまうと、敬吾の肩がビクリと揺れる。
「いち、……ちー……」
「んん、ごめんなさい……もうちょっと待ってね、」
言いながら、逸は敬吾の腰をベッドに下ろした。
触って欲しいのは山々だがもう少し落ち着くまでと敬吾にキスすると、かぶり付くように積極的な唇が返ってくる。
逸は嬉しげに笑った。
半端な熱が本当に身を焼くようで、敬吾は苦しげにただ逸の舌を追う。
「……っ、逸……、」
「………?」
僅かに離れた敬吾の顔は悲痛に歪んでいた。
逸が心配そうに髪を撫でてやると、その手はおずおずと逸の腰元に下りていく。
「ーーーー、」
逸がかなり凶悪に笑っていることにも気づかずに、敬吾は祈るような気持ちで逸のそれを手に取った。
徐々に膨らみ始めたのを見ると、泣き出しそうに眉根を寄せる。
「…………敬吾さん」
「ーーーーーっ、」
「ほんと今日はやらしいなあ……」
拗ねたように敬吾が逸を見上げると、逸はもはや黒黒しさを隠そうともせず笑った。
更に子供のように唇を尖らせて、敬吾はその視線から逃げるように顔を俯ける。
「……やらしい、わけじゃない……お前のだから、だからーー」
「っ………………!!」
「んわ!!!」
「もう!ほんっとに…………!」
またも最後まで聞かずに逸は思い切り敬吾を押し倒した。
敬吾が背中の衝撃に目を瞑っている間にもう左足はガバリと開かされている。
「……まだちょっと柔いですけど。敬吾さん、中で硬くしてね…………」
「っん!んん…………!!」
ぬるぬると逸が分け入ってくる。
迫る熱に体全体をうねらせて敬吾はシーツに縋った。
逸の言っていた通りに柔らかいが、それがまるで溶け合うようでたまらなかった。
「ーーっあ、すげ…… ……交ざってるみたい」
笑いながら眉根を寄せてそう言う逸がまるで頑是ない子供のようで、敬吾は何やら切ない気持ちになる。
頭を撫でてやると逸がその手首を取り、口付けた後に指を含んだ。
甘噛みされ、根本を舌で撫でられると甘く快感が走る。
無自覚にそこを締め付けてしまうと、困ったように逸が笑った。
「あはは、凄い……新感覚」
「何言って……っんっ……!」
「固くなってきてるの分かりますか……?」
とろけそうな顔で笑いかけられ、敬吾は言葉が出ない。
必死で頷くと逸の顔が近づいてきた。
唇を合わせたまま優しく、だが重く体を揺さぶられて敬吾が細く声を零す。
どうしようもなく胸の奥が温かい。
逸の背中に腕を回し肌を貼り付けるともう、僅かに残っていた違和感など跡形もなくなっていることに気がついた。
「……いち、逸ー……、すき………」
「っ、敬吾さん……!かわい……うれしいけどっ、そういうのも俺、出ちゃいますからね………!?」
「う………」
逸は照れた子供のように開けっぴろげに笑い、赤面している。
ーーそんな顔は、おそらく今日は初めてだった。
その目尻が、悲しんででもいるかのように下がる。
「でも、もう一回言って………」
「ーーう、すき………」
「うーーー、もーーーー……!」
「んっ……!」
「ーーっもう!ほんと今日は朝まで付き合ってもらいますからね………!!」
「えっ、んーーっ……!」
逸が大きく敬吾を穿った。
一番奥を重たく突き上げられ、敬吾は快感の渦に引きずり込まれる。
「敬吾さん、可愛い………そんな顔ほんと……俺以外に、見せないで、ーーーー」
磔るように指を絡ませ、逸は快楽に歪んだ瞳で敬吾を見つめながらそう言った。
敬吾はもう、藻掻くような喘ぎ以外の声も出せない。
見せるわけがないのに。
絶対にあり得ないのにと、声にならない叫びが胸の中に溢れていた。
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