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悪魔の証明 17

「…………ん」 敬吾が目を開く。 逸が出かけていってからしばらくうとうとと微睡んでいたが、日も高くなってきて自然と意識が戻った。 枕元の携帯で時間を確かめようとするが、充電が切れているらしかった。 (そんなギリギリだったっけか……充電器借りよ……) コンセントに挿しっぱなしになっている充電器を手繰り寄せて端末に繋ぎ電源を入れると、一時間ほど前に篠崎から着信が入っていた。 その前には、後藤から数件。 ーー後藤のことは、とりあえず後回しにしよう。 篠崎に発信すると、数コールで繋がった。 「あ、おはようございます。すみません俺携帯の充電切れちゃってて……」 『いやいや、こっちこそ休みにごめんねー、敬吾くん、この間の展示会の時ホビーブースの写真撮ってたかなと思って。俺の写真、見たい商品がよく見えなくてさー』 「あー、どうだったかな……探してみるんで一回切りますね」 『ごめんね、よろしくーー』 一度通話を切り画像ファイルを呼び出す。 と、覚えのない真っ黒な画像が一枚あった。 「……?なんだこれ」 開いてみると、微かな雑音。動画のようだ。 動画など滅多に撮らないし、撮っていたとしても画面がいつまでも真っ暗というのはどういうことだろうーーー 微かな雑音を良く聞こうと敬吾は音量を上げた。 『ーー良い子ですね、敬吾さん』 「っ!?」 ぞくりと背中に震えが走る。 興奮しきった逸の声に、濡れた音。 携帯を取り落としそうなほどにびくついてしまう。 頭の中は一気に混沌と化したが優秀な反射神経が即座に動画を停止させた。 「なっ、」 まだ動悸がしている。 「なんだよ…………!!!」 誰にともなくそう言って、指差し確認でもし兼ねない慎重さで敬吾は動画を消去した。 そうして昨夜のこの携帯の処遇について考える。 ーーあの野郎、カメラを停止させないまま放り投げやがったのか。 静電気なのか誤作動なのか分からないが録画が始まってしまい、この愚直で誠実な小さい機械は延々暗闇を我が身に記録し続けていたようだ。 少々悲しい。 「心臓いてえ………」 不穏な揺れ方をしている胸を撫でつつ、敬吾はとにかく頼まれた画像を探して送信した。 必要十分かどうかは分からないがこの際どうだっていい。 狼狽は収まってきたがまだ動揺はしている。 ーーあの声。 こちらも熱に浮かされている時にしか聞いたことがなかったが、改めて聞くと何と言う声をしているのかーー。 悔しくなるほど顔が熱くなってしまって携帯の表示を落とし、敬吾は逃げるように布団に潜り込んだ。

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