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褒めて伸ばして 22
「ただいまー」
「お帰りなさい、早かったですねー」
「まあ飯食っただけだからな。ほら」
敬吾が差し出したビニール袋を逸は笑ったまま不思議そうに受け取った。
主の差し出すものなら苦い薬でも飲み込む犬さながらである。
「ピザは持ち帰り出来なかったから、カルツォーネ」
「あっまじで持ってきてくれたんですか!やったぁ」
嬉しそうに逸が包みを開ける。
「カルツォーネってあれですよねえ、ピザ丸めて焼いたみたいな……生地も手作りってことなんすかね、すげー」
「そうなんだ。何食っても美味かったぞ」
「へー……早速食ってもいいですか!」
「どーぞ……絶対お前も好きだよなあと思ったけど、なんの因果か後藤の知り合いの店だった」
「えっ」
「なんだよ。正直に言ってんのに」
「……いや、はい。すみません」
少々興を削がれてしまったらしい、しょんぼり顔の逸を置いて敬吾はリビングに入る。
すぐに温まったフォカッチャを持ち逸もやってきて、敬吾を横から抱きしめた。
「ごめんなさい。」
「ぶっは!別に怒ってるわけじゃねえよ!」
妙に落ち込んでしまっている逸の頭を撫でてやって、敬吾は食べるよう促す。
情緒不安定にでもなっているのだろうかと半ば本気で懸念してしまう。
「敬吾さんもひとつ食べません?」
「んん、食おうかな」
「中身なんなんですかねー」
「おすすめで作って貰ったから俺も知らない」
「へー……なんだろー」
敬吾はそのままかぶりつき、逸は半分に割ってみていた。
「うーわっすげえチーズ!こぼれる……」
「こっち野菜だ。と、ベーコン?うめー……」
「これもうまい……チョリソーかな」
「マジで外れないなあ。カレーもすげーうまかった」
「くそー……俺も行きたい…………」
「仲直りしちゃえばあ?」
「いや俺もともと知らん人ですよ」
「つーか、俺に行くなとは言わないのな」
「あれ?……そうですね」
心底不思議そうに逸は瞬く。
敬吾を行かせるなら自分もついて行った方が良いに決まっているのに、その逆を行っている。
やや不愉快ではあるが不安はない、というところだろうかーーーー
「なんでだろ」
「まあ、ピリピリしてるよりはいいんじゃね」
「です…………かね?」
「うん。なあこれ半分交換しよう、俺の思いっきり食いかけだけど」
「あ、ですね!」
結局残った一つも半分にして味わう。
スパイスの効いた鶏のローストとトマトが入っていた。
「ちょっともうなんすかこれ………」
「……お前作れる?」
「これは無理ですわ……複雑過ぎる。俺もハーブとかスパイスに手出しちゃおうかなあ」
心底満足してくちくなった腹を撫でると、あくびが上がってくる。
「あー……、俺風呂入ろっかな。お前どうする」
「んー、今日は一緒に寝てもいいですか?」
「え、いいけど……」
「今日一日くらいなら我慢できる気がする!」
「ん?」
「え?」
「……………明後日だぞ?」
「えぇっ!!!!!!?」
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