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褒めて伸ばして 23
「け………敬吾さんちょっとだけ…………!ちょびっとだけお触り………っ」
「いや触るだけなら好きにすりゃいいけどさ。それで我慢できんのか?服無駄んなるぞ?」
「ううっ………………!!!」
という運びで。
カウントダウンを一日間違え凹みに凹んだ逸は背中から敬吾を抱きかかえ、首に顔を埋めて嗅ぎまくっていた。
(逆に変態くせえなこれ…………)
「うぅ……敬吾さんいい匂いする、超いい匂いするー………」
「しねえよ」
「するんですもん」
「だとしたら体臭だろマジかよ」
「違いますよ甘い匂いですもん……」
「しねえっつーの」
「するもん………」
「……………泣いてねーか?お前」
すっかり幼児返りしてしまっている逸が可愛くないではないがさすがにうんざりと脱力し、呆れ果てたように敬吾は姿勢を崩す。
「ーーーーだって」
「あん?」
「明日できると思ってた…………」
「ーーーーーー!」
右耳から顔中に一気に熱が広がる。
傷ついて掠れた逸の声に、完全に油断していた敬吾は危うく攻め落とされるところだった。
「っつ、つーか!勃ってる!!!もう終わりっ!」
「ええ………」
あわあわと逸の腕から逃げ出し、背中を向けないようにする。
くたりと背を丸めたまま行き場を失った腕をゆっくり下ろしていく逸は、物欲しそうな子供のような顔をしていた。
今にも指を咥えそうな。
「そ、そんな顔してもだめだぞ!!」
「え?」
物足りない顔のまま怪訝そうに瞬き、逸は首をひねる。
敬吾ははたと赤くなった。
そして空咳をし、また逸を見る。
「ーーで、どうする……厳しいんじゃねーの、ここで寝んのは」
「ですねー……」
ふう、と心底落胆したように吐息を落とし、逸は四つん這いで敬吾に寄ってくる。
「じゃあ、もーちょっと充電…………」
「う、…………」
物欲しげに開いた逸の唇が近づき、咀嚼でもするように敬吾の唇を食む。
長いことそうした後に深く合わせ、いやに耽美に舌を絡め取った。
激しくはないが執拗に口付けられ、切ないような濡れた音と声とが漏れる。
「……敬吾さん、声出されるとキツい…………」
「無茶、言うな、苦しい……んだよっ!」
「気持ちいいんじゃなくて?」
「うるさい…………っん、」
また深く唇が噛み合うと、逸の呼吸も激しく上がりだした。
それが危うくて、切なくて敬吾の目が細くなっていく。
ーー本当に、何が一体この男をここまで掻き立てるのだろう。
正体不明のその何かを、逸は敬吾の肩に頭を乗せ深く盛大に吐き出した。
「……………ん、おっけーです」
薄く笑う逸の頭を敬吾が撫でてやる。
「お前って」
「?」
「意外とエライよな」
「意外ってなんすか!」
「忠実すぎて餓死しちゃう犬、みたいな」
「悲しい!!!」
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