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褒めて伸ばして 25

「岩井、……おーい、起きろー」 「…………………」 自らも眠たげに目を擦り擦り、敬吾は逸の肩を揺する。 逸は微動だにしなかった。 「おーーい……もー、」 ふう、とため息をつき敬吾は体を起こす。 横倒しのまま揺すったところで今日の逸にはどうやら効かないようだ。 ベッドの上に立ち膝になり、体重を掛けて逸に伸し掛かる。 「岩井ー、起きろって」 「ん……………」 自分の肩に半ば埋まっていた目が微かに開いた。 そしてそれがそのまま鋭く開いてーー、 敬吾が驚いている間に、強く敬吾を睨め付ける。 「……………っ!?…………っん!んんっーーー」 敬吾を引き倒しながら自分も起き上がり、逸は敬吾の唇を奪った。 狼狽えながらその腕にしがみつき必死に応対している敬吾を、髪を乱し強く掻き抱き逸は貪る。 未だ覚醒し切らない意識が濡れた音に侵食されて、敬吾は現が分からなくなり始めていた。 結局、自重を支えきれなくなったことでその混沌から逃れる。 その機を逃さず逸の肩に思い切り手を突いたが、さほど離れられもしなかった。 「っ岩井!おま……お前今日出勤だぞ、」 「敬吾さん」 気圧されるような強い声で呼ばわれて、敬吾が俯けていた顔を驚いたように上げる。 逸は真っ直ぐに、だが呆然としたように敬吾を見ていた。 引力にでも捉えられるようにただその顔を眺める。 ゆっくりと唇が開かれた。 「ーーー敬吾さん、したい?」 「………………へ?」 「敬吾さん、俺とーーセックスしたいですか?」 未だ呆然と逸を見つめていた敬吾の顔が、綺麗に薄赤く染まっていく。 なぜ、いつものように笑顔や音律が伴っていないのだろう。 こんなにも、剥き出しなのにまっさらで平らな声と表情は知らなかった。 あまりに深くて清廉で、上手に受け止められないーー 「敬吾さん」 「ーーーーーっ……!」 敬吾の手首を掴み、俯けられた顔を覗き込むように逸が顔を傾けた。 またあの声で呼ばわれて、敬吾は余計に肩を縮める。 「ねえ、……エッチしたいって思ってくれてますか?」 「聞くなってもう!その声やめろ!」 「敬吾さんーー」 「ーーーーーーっ」 これ以上抗ったところで今すぐ免疫はできそうにない。 熱くなる顔とびくついてしまう肩がただただ恥ずかしくなるばかりだった。 不服だ、不満だ、不愉快だ、不本意だと精一杯主張するように敬吾の唇が震えながら尖る。 「ーーーーーっしたい」 逸が満足げに、底なしに朗らかに微笑む。 そのまままたベッドに倒れ込んで、したたか敬吾に叩かれた。

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