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したいこと? 9
長い口づけの間、敬吾の指先が逸の中心を掬って緩く揉み始める。
頬を掠める呼気が熱い。
敬吾がくすりと笑って顔を離し、もう片手で頭を撫でてやると逸は蕩けそうに表情を緩めた。
「やばい、気持ちいい……」
そんなことを宣う辺り、まだ余裕はあるらしい。
敬吾はまた啄むように口付けてその唇を顎へ喉元へと下ろしていき、胸板からその先端へと滑らせる。
思わず仰け反った逸の肘が、浴槽に重たい一発を食らわせていた。
「ぅあはっちょっとっ敬吾さんっ!」
「んん?」
「わっ、それ……、…………!」
口の中で芯を立て始める感触が楽しい。
それを執拗に倒してやりながら逸の顔をちらりと覗くと薄く上気している。
困ったように眉根を寄せて目だけでこちらを見下ろす表情はまるで生娘だ。
思わず笑ってしまい、逸からよく見えるように舐め上げてやってからやっと敬吾は口を離す。
「お前乳首弱かったんだ」
「弱………いや………、」
「ガッチガチになってるじゃん」
「敬吾さんが……そういうことするから……」
「んん?」
基本的に敬吾はこの上ない常識人だ。
人にも自分にも厳しいし、感情に流されることを嫌う。
それでも動物である以上本能一辺倒になることは当然あるのだが、そうではなく、こうも冷静な敬吾のまま淫らな行為をしているというのはーーーー
ーーただただ、いやらしい。
ふと目が覚めてしまわないことを祈るばかりだ。
「……………お前」
「ーーえ?」
思索から覚めて逸が視線を上げると、敬吾は少々サディスティックな笑みを浮かべていた。
「………ほんとに良い顔するなあ」
「………………へ?」
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