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アクティブレスト 5
「……2号店ってどんな感じなんだろうね」
さりげなく、という風を装ったらしい口調で敬吾が言う。
幸はぱちぱちと瞬き、にやけそうになるのを堪えて視線を伝票に戻した。
「大変みたいですよーー、なんかこの間は施工が変更になったのが店舗まで連絡行ってなかったみたいで。欲しかったとこに柱なくなっちゃって、それがまたシビアに棚割り決めたとこだったからもう最初っから店長と逸くんで練り直したとか」
「…………………………………はあ?」
ーーそれはさすがに、篠崎も可哀想だ。
絶望的な顔をしてそうとしか言えない敬吾を見て、幸は笑いを堪えきれなくなってしまった。
「あとほら、悪天候続きで棚とか荷物の着が遅れたり……」
「………………………」
限界まで寄っていたと思われた眉根に更に深く皺を刻んで、敬吾はもう何も言えなくなる。
幸の表情も気遣わしげに緩んだ。
「……逸くんのこと心配なんでしょー」
「……えっ!!?いやいや違う違う」
敬吾は当然否定するが、幸も当然信じない。
手際よくラベラーを打刻しながら、幸は口笛でも吹くように唇を出しながら笑う。
「まああたしも気になりますけどねー、2号店どんな感じのお店なのかー」
「…………………」
「今日上がった後見に行っちゃおっかなー、なんか差し入れでも持ってー」
「……………………」
「……………それ代俺が持ちます」
「うふふー」
幸もまた、気遣いが上手な部類なのであった。
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