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襲来、そして 23
数分前まで己の手で擦っていたそれは、敬吾の唇が触れればすぐにその熱を思い出して面白いほど膨張した。
敬吾がクスクスと笑ってしまうほど。
「可愛い。」
「うぅ………」
ちろちろと弄ぶような、奉仕とは名ばかりの横柄な愛撫が熱を帯びて行くと限界も早い。
生き物のように走る血管が脈打ち痙攣するたび敬吾は笑ったが、先程のような不遜なものではなく心酔したような笑み。
それを隠したくて真上から飲み込み吸い上げると、それは更に大きく痙攣した。
「んー………」
「あー敬吾さん、可愛い……」
敬吾の顔の横で逸の内腿が引き攣る。
ほどなく呼吸が激しく荒れ始め、早くも快感に溺れた逸は我知らず敬吾の頭を抑え込んだ。
濡れた先端が上顎に当たり、擦り付けるように奥へと捩じ込まれていく。
その苦しさと背中に走る熱に、敬吾は目を顰めた。
縮まる舌を必死で伸ばし、迎え入れるように喉まで飲み込む。
それをまた強く絞り出すように半ば口から出したところで、逸は呻き大きく震えた。
舌の上に生温い苦味をぶち撒けられても、驚くどころか敬吾は更に酩酊を深くしたような顔をしている。
必死で飲み込んでいるうち自分でもそれに気付き、恥ずかしくなって努めて思考を引き締めてーー
その冷静な頭は、思った。
「濃いし……多いし………」
「!!っすみません、久しぶりで………」
「え、なんで?」
「いや……、下に敬吾さんとお姉さんがセットでいるって思ったらなんか……」
「繊細すぎだろお前」
それは否定できないが、逸にとって「敬吾の家族」は特別だ。
敬吾本人もだが、背筋を伸ばさなければいけないような、妙な気合いが入ってしまう。
敬吾の口元を拭ってやり、逸は跪いていた敬吾の脇に手を入れて引き寄せた。
ここ数日寺社にでもいるように引き締めていた精神はもう、敬吾の肌を前にして、煩悩に溺れきっていた。
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