268 / 280

襲来、そして 25

敬吾の喉が、苦しげに悲鳴のような喘ぎを押し込めて震えている。 ごくゆっくりとした反復にも耐えられないほど、激しく感じてしまっていた。 「敬吾さん、今日凄いですね……… 可愛い」 「っや、………!」 ーーお前のせいだ!と敬吾は言い返したかったが、その一言すらまともに言える自信はない。 馬鹿になってしまっている喉が、どんな崩れた音にしてしまうことかーー 代わりに敬吾は、必死に目で訴えた。 少しだけでいいから、名前を呼ぶのをやめてくれ、動かないでいてくれと必死で視線に込めたつもり、なのだがなぜか逸は笑う。 かなり凶悪に。 「敬吾さん……そんな目で見つめられたら俺……」 「!!!?ちっ、あ……ちが、んん……!!」 敬吾がなんとかそう絞り出し、首を振っても逸は知らない振りを通した。 やや強く振られ出した腰にもう声を堪えきれなくなり、察してくれない逸に素直に懇願する。 「あっ、いち……も、やめっーーんーー……!」 「んー……?」 「いや、だっ……逸ぃ、あっ、ぁー……っだめだ、って、んぅ……!」 さっきまで必死でしていた我慢すら、逸が「させてくれていた」のだと思い知らされる。 それほどに、全力どころかまだ優しげな余裕を持った笑顔で、逸は敬吾を見下ろしていた。 ーーこれでは、今こんなに頑張ったところでーーー 「っ、う……」 「ーー敬吾さん?」 「ん………っはぁ、っ………」 「どっ……どうかしました?痛い!?」 「ちがうバカ………」 「えー……?」 涙こそ流さないものの嗚咽するようにしゃくり上げる敬吾の頭を逸が撫でると、切なげに細まっていた瞳が僅かに開かれる。 まっすぐ逸を見上げるそれはもう、潤んで輪郭を失っていた。 「も……、いく……っ、」 「あ……」 敬吾がそう言うと堪えきれなくなった涙が零れ、逸はその美しさに一時釘付けになる。 その一瞬の後、嬉しげに蕩けそうに笑った。 「……はい」 笑顔と同じく、優しく崩れ落ちるように逸が敬吾の上に重なる。 その背中に敬吾が腕を回し優しく穿たれると、細く声を漏らしながら激しく昇り詰めた。 小さく激しい敬吾の声を耳元に聞きながら、逸はしがみつかれるまま、しばらくそうしていた。

ともだちにシェアしよう!