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第6話 想いの消失
今日のリンリーとの戦いは激しくクリスタルは
傷だらけでボロボロだった
それでも他のレンジャー達がたいした怪我もなくホッとしていた
自分は作り物だから幾らでも換えはある
だから無理しても傷ついても前戦にいることが自分の存在価値だと思っていた
その日もクリスタルは医務室に寄ることなく通り過ぎた
小さな傷なら自己治癒だし包帯なら自分で巻ける
誰にも気付かれないようにそっと自室のドアを開けた
誰もいないはずの暗がりの部屋の中にグレーが立っていた
ドアを開けたのだからクリスタルの存在には気付いたはずだが光学迷彩機能で姿は見えない
グレーの安堵の表情を見たクリスタルは何故か後ずさる
グレーの視線が見えないハズのクリスタルの姿を絡め取る
真っ直ぐに伸びる手が迷いなくクリスタルの手を取り引き寄せ抱きしめた
そっと強く存在を確かめるように
「無事で良かったクリスタル」
苦しそうに言葉を吐いた
リンリーとの戦いが激しかった事を知り心配で部屋で待っていたようだ
「ちょ、グレー離せよ」
「ダメだ、今ここで君を離したら二度と触れられない」
クリスタルは少し抵抗してみたが諦め光学迷彩機能を切った
グレーの気持ちが本気だと思ったからだ
そしてグレーの腕の中で高鳴る心音と共に姿を現していく
クリスタルは俯き加減だった顔を上げた
思った以上にグレーの顔が近くにあり恥ずかしく目線を逸らす
グレーから優しく軽く唇が数回触れるが
触れただけで何もせずじっとクリスタルの目を見ていた
躊躇ったが今度はクリスタルからグレーの唇に触れた
何故かそうしなければならない気がしたからだ
それが合図だった
今度は激しいキスへと変わる
舌先から入ってくる
口を開き舌を絡め貪り合う
んっ・・・んっ・・・はぁ・・・
呼吸を忘れるほどに夢中に求めあった
「んっ・・・・・・・・・グレー・・・」
小さく名を呼んでみる
しかし同時に遠くで同じく名を呼ぶ者がいた
誰かがグレーを捜してるようだ
クリスタルは我に返りグレーを突き飛ばし
左手で口元を拭った
何して何してたんだ俺は
「???・・・クリスタル?」
「行けよ、早く行けったら!」
いきなり突き飛ばされて
グレーには何が何だかわからなかったが誰かが甘い声で自分を呼んでいる事に気付いた
だが聞こえない振りをしてもう一度クリスタルを抱きしめる
しかしグレーを呼ぶ声は止まずむしろ大きくなりクリスタルの部屋の近くまで来ていた
グレーはため息をついた
ゆっくりと身体が離れていく
「直ぐに戻る」
そう言って複雑な表情をして部屋を出ていった
行くな!
クリスタルは心の中では強くそう叫んでいた
嘘でも取り繕いそばにいて欲しかった
きっと俺はグレーが好きなんだ
でもアイツは違う
ドア越しに微かに聞こえる2人の話し声に耐えられず耳をふさぐ
突き放した想いは戻らない
クリスタルは拒否るようにドアを拳で叩き廊下にいるグレーに聞こえるようにカギを掛けた
そして膝をつき肩を抱き床に額を押し付け声を殺して泣いた
遠ざかっていく二人の足音
知っていた
わかっている
俺はアイツの特別じゃない
気持ちの無いまま抱かれるくらいなら
消えた方がいい
消えたい
消してくれ
きっと今夜も俺じゃない誰かと一緒にいる
そして俺じゃない誰かを抱く
この想いは耐えられない
誰も気付いてない
でも俺は知っている
グレーの特殊能力ー記憶操作
それを考えると苦しかった
消そう
消えてしまえ
俺の気持ちも
アイツの存在も
どのくらい泣いたか少し落ち着き
ふと目線をベットの上に向けると薬箱が置かれていた
グレーが用意したようだ
クリスタルはそれを両手で持つとドアに向けて投げつけた
箱は壊れ中の包帯や薬が床に転がった
そしてクリスタルの頭の中で機能停止の警告音が響く
消えゆく意識と想いは一緒になりクリスタルはゆっくりとベットの上に倒れた
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