7 / 8
第7話 渇き
はぁ・・・あっ・・・気持ちいいよ・・・グレー・・・ダメだ・・・いく」
肌が擦れ合う音、荒い息遣いと喘ぎ声が静かな夜の部屋に隠る
クリスタルの両の太腿を抱えピストン運動を繰り返し合わせるようにクリスタルの身体が波打つ
壊れるほどに、夜毎愛し合い睦み合う二人
汗ばむ身体と乱れるシーツに我慢し損ねた蜜が零れていく
しっとりと湿ったシーツがクリスタルの背中に張り付き握り締めた手がシーツを引き裂きそうになっていた
「もうダメー・・・くっ・・・グレー」
「・・・クリスタル」
両腕がグレー首に回され引き寄せられる
グレーの白濁を少しも漏らさない用にクリスタルの中がキツく締まる
トクン・・・絶頂に達し解放された想いと身体と
クリスタルの声にならない声が部屋に響き
体温よりも熱くなったグレーの白濁の液は全てクリスタルの中へと注がれる
と、同時にグレーの左肩にクリスタルの歯が穿つ
「・・・っ」
痛みで少し声になった
コレはクリスタルの性癖というか噛みグセらしい
イク瞬間までも自我を保ちグレーの全てを感じていたいと
最初の頃は自分の腕や手を噛んでいたが見かねてグレーが「自分を傷つけるぐらいなら俺を噛め」と言ったからだ
それからは抱き合う度に噛まれたグレーの身体は至る所に噛み跡があったがしかし今はすっかり消えてしまっていた
「ねぇクリスタルって誰?恋人?」
突然の問いかけに一瞬だけ自分が何処にいて何をしてるのかわからなかった
俺は夢を見てたのか・・・?
「違うか、恋人がいるならセフレは作らないし、今時分は僕とセックスしてないもんね」
目の前にはクリスタルによく似た男がいて彼とのセックスに励んでいた
数週間前に街で声をかけてから続いているセフレの1人だ
場所もよく使うホテルの一室
かれこれ小一時間ほど励んでいたようだ
夢うつつで意識がしばらく飛んでいたんだろう
スグに意識がハッキリして
そろそろ頃合いか・・・とも思った
やはりイク瞬間でも満たされない
心も身体も渇きが残るのは相手がクリスタルではないからと分かっていた
「あぁー・・・はぁはぁ・・・ホントにグレーとのセックスは最高だよ」
「・・・・・・・・・」
「いつもは無言でヤって終わりだったけど今日はいっぱい囁いてくれたし僕嬉しかった」
囁いた?俺が?
少し考えたグレーを見て彼は
「クスっ、愛してる愛してるクリスタルってね。僕じゃなかったのが残念だけどセフレだし
仕方ないか」
屈託のない笑顔はホントにクリスタルに似ていて、名も知らないセフレとクリスタルを間違えるとはグレーは少々自己嫌悪を感じ額に手を当てた
「すまなかった」
「あはは、気にしない。気にするぐらいなら本命と仲直りするか想いを伝えなよ」
そう言って
手早く着替えを済ませて彼は部屋から出て行った
痛いところを突かれたな・・・
今後彼と会うことは無いだろう
スマホから彼のアドレスを消すと
1人になったグレーはベットに身体を投げ出し天井を仰ぎみる
「仲直りか・・・」
自分の中にあるのはクリスタルとの幸せな記憶だけ
たとえクリスタルの記憶が消えたとしても愛される自信はあったが先日見事に打ち砕かれた
「くそっ」
クリスタルは人見知りが激しくなかなか心を開かない、やっと姿を見せてくれた筈なのに
傍にいるのに触れられない、存在するのに見ること叶わず、手に入れれば心の無い木偶になる
「何かの呪いかよ」
グレーは自らの行動を後悔していた
あの時に手を離したのは自分なのだ
両手を伸ばし空を掴む
目を閉じ愛おしい人を想う
「クリスタル・・・クリスタル・・・」
グレーの目から涙が落ちていった
ともだちにシェアしよう!