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第10話

「動くぞ」  大きくグラインドした腰が俺を穿(うが)つ。 「あああっ」  普段の薫からは想像もつかないほど、そのセックスは激しかった。  奥を突かれるたびに、ペニスが前後に揺れ、赤々と勃起した先端から潮吹きのように精液がぴゅうぴゅうと吹き出し、腹や胸に飛び散って肌が白濁に汚れてゆく。  目に映る光景のあまりの卑猥さに、俺の口からも泣き言が飛び出した。 「い…や、いやだ、かおる…っ。待っ…、止まれ…()めてくれ…ッ」  あられもなく快楽を享受し、まるでお漏らしのような痴態をさらす自分の姿が、情けなく、猛烈に恥ずかしかった。  初めての性交で、しかも排泄孔を性器代わりに扱われて、なのに――感じすぎるほどに感じる躰に心がついていかない。  Ωにとって、そこは排泄孔の役割をなすだけではないと知識として知っていても、長年αとして生活してきた俺にその感覚はなかった。  俺にとってそこは、他のα同様に、やはり性器ではなく排泄孔なのだ。  薫を受け入れる決意はしても、自分のΩである体の(みだ)らさを受け入れる心構えはできていなかった。覚悟が足りないといえばそれまでだが、セックス自体が未経験で未知の分野だったのだ。頭では理解していても、それはあくまで情報としてのそれで、表面的なものでしかなかった。わかっているつもりで、まったくわかってなどいなかったのだ。実際にセックスをするまでは。  セックスは、あらゆる意味で俺の想像の範疇を越えていた。  せめて、頭上で拘束された手さえ自由になれば、精液を噴水のように吹き上げるはしたない性器を手で隠すことも押さえることもできるのに、と自分を組み敷く男に(すが)る。 「手を…枷をッ、外してくれ…!」 「だめだ」  しかし、にべもなく、無情にも、――四度目のダメ出しが返ってくる。 「かおる…っ、かぉ…るっ!」 「やっぱり(くく)り付けておいて正解だった」 「…逃げ…る、わけじゃ、ないッ」  打ち付けられる腰の衝撃に、言葉がとぎれとぎれになって、舌を噛んでしまいそうだ。セックス中は、ろくに喋ることすらままならないのだと、俺はそんなことすら知らなかった。一度走り出したαやΩの本能が、……とても貪欲だということも。  俺の上で色っぽく息を乱しながら腰を振る薫の動きは、激しく、ややもすれば荒っぽくさえあるのに、それを受け止める俺の躰は与えられる一挿し一挿しに喜び、打ち震えた。 「……すごいな、おまえの躰」  さらなる辱めを与えようというのか。  薫らしくない、どこか上擦った声でぐりぐりと中を()ねまわしながら呟く。 「中がうねって…(ひだ)がこすれて…きゅうきゅう締めつけてきて…腰がぐずぐずにとろけそう…。最高に…気持ちがいい。病みつきなりそう……」

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