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第15話

 自分が抑制剤を飲むのはわかるが、なぜαである薫がそんなものを飲まなければならないのか。  意味がわからず問うと、呆れた顔をされた。 「…………おまえ、本当にΩの自覚がないんだな…」  溜め息まで吐かれた。さすがにむっとする。 「怒る前に考えろ。――Ωのヒートはαのフェロモンに誘発されて起こることもあるって知らないわけじゃないだろ?」 「あ…あぁ、そうか、なるほど…」 「……ほんとうにわかってんのかね? 俺がうっかりおまえに欲情してフェロモンだだ漏れになったら、おまえもそれに誘発されてどんなに強力な抑制剤を飲んでたって発情期まっしぐらだろ…って言ってんだよ。αのフェロモンを甘く見るな。あれはΩにとっては毒に等しい催淫剤だ」  ぺしりと額を叩かれた。 「――悪かった」  たぶん、俺の知らぬところでこれまでにもこうやってフォローをしてくれていたのだろうと感じ、申し訳なく思った。  俺が学園で誰にもバレずにαでいられたのは、きっと薫の手助けがあったからに違いない。 「謝ってほしいわけじゃない。……けど、そろそろ限界だと思っていたのも確かだな。ヒヤリとすることが何度かあったし、それに……おまえ、抑制剤が効きにくくなってただろ? 一番キツイやつに変えたって聞いた」  ……その情報源が誰だか気になったものの、それよりも心配そうにこちらを窺う薫の視線に射止められてドキリと鼓動が跳ねる。 「Ωの抑制剤ってけっこう身体に影響するって話だけど、大丈夫なのか?」 「ああ、…まぁ、高校卒業するまでだしな」 「なんで高校卒業?」  つい話の流れで口を滑らせてしまってぎくりとする。迂闊だった。  普通なら「そうなんだ」で済む話だが、なにかと鋭い薫は違う。 「……一応、目安というか、……とくに深い意味はない」  話を濁そうとしたが、それが通用する相手ではなかった。 「意味がないことをおまえはしないさ」 「……」 「意味があるから、おまえはそうするんだ。……さて、その意味に俺はとても興味がある」  引かない顔でまっすぐ見つめてくる薫に、俺は観念して「意味」を吐露した。 「風紀委員長じゃなくなるからな。約束を果たせば、――もうΩとして生きてもいいかと思っていた」 「……それだけじゃないだろ」  俺の中に(やま)しさを見つけ、薫は二ィと口元を歪める。 「逃げる気だったな? ――俺から」  弛緩していた筋肉に再び躍動感を(みなぎ)らせ、薫は俺の下肢を乱暴に押し開いてその間に己の身体をねじ込み、唇を舌で舐め――そして……、 「逃がさねぇよ?」  再び一気に突き入れて来た。

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