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偽りのα 第1話
三人称、薫視点。
生徒会長の裏の顔。
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「お話があるんです」
人払いをした生徒会室で、そう深刻な表情で切り出してきたのは、園原 涼太 、――ゴールデンウィーク明けに学園にやってきたΩ性の編入生である。
園原は、本人の資質かあるいはその希少なΩ性であるためか、わずかな期間で学園に通う名だたるαの生徒を魅了してしまった。
そして、現在、風紀委員長の推薦で生徒会庶務の役職に就き、主に生徒会長である薫の補佐を務めている。
薫は、来客用のソファーに園原を促し座らせると、その隣に腰かけた。
園原の白い頬がほんのり赤く染まるのを眺めながら、話を聞く態勢に入る。
「……それで、こんな風にあらたまって、どんな話があるのかな?」
「風紀委員長の…、雛森 碧(あおい)先輩の、ことです」
言いにくそうに、どことなく躊躇いを声に乗せつつも、園原ははっきりと碧の名を口にした。……だから、胸に湧くどす黒い嫌悪感を薫は押し殺さねばならなかった。あまりに狭量な自分の心が滑稽でもある。
「碧?」
それでも我慢できず、……まるで対抗するようにその名前を口にしてしまう。
「……はい」
園原はもったいぶって間を置き、十分に期待感を持たせてから、……タイミングを計ってそれを言った。
「彼は、β…だと思います」
「――」
「αのふりをして、みんなを、……薫先輩を騙しているんです」
「へぇ……碧がβ、ね。それは初耳だな」
「僕は、平気な顔で、あなたを…全校生徒を欺 く風紀委員長を許せません」
園原は熱をこめて言い募った。
「許してはいけないと、思うんです」
正義は、自分のものであると、自己陶酔がちらちらと口ぶりの端々からうかがえた。そして、その中には巧妙に隠された媚びも含まれていた。
薫は真摯な顔を作り、ほんの少しだけ声に翳りを配分して、沈んだ声を出す。
「それが本当なら、由々しきことだね」
「はい!」
我が意を得たりと、明るく瞳を輝かせわざとらしい純粋さを演出する園原に、薫は優しく微笑んだ。……どうしてこんな紛 い物の純粋さに他のαが騙されるのか、つくづく理解できないと思う。真実純粋なΩなど、薫は一人しか知らない。
「それで、俺はどうしたらいいと思うのかな? 涼太」
わざと普段口にしている名字ではなく、固有名詞で呼ぶ。
園原はとたんに嬉しそうに顔を輝かせ、うっとりととろけた目つきで薫を見た。
「……あなたは何も。僕が、僕がすべて…。僕に任せてください。あなたのために彼の嘘を暴きます、きっと」
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