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1.君の秘密(1)
東京。
「ツいてこいよ!」
最後の扉を回し蹴りに蹴破り、ヘリポートの円が描かれた屋上へと男は走り出した。
一直線に横切り、防護柵とフェンスの行き止まりまで疾走する。
男が振り向くと、無残にへし曲がった扉を静かに開けて、人影が現れた。それを確認するなり、男は微笑を浮かべ、軽々と防護柵とフェンスを乗り越えた。
尋常ではない速さ。木の葉が風に舞うような動き。
そのまま、眼下へと広がる闇の中にその身を踊り投げた。
ヘリポートの中ほどまで男を追って歩いていた人影は、不意に取られた行動に防護柵とフェンスへと駆け寄る。
細身の、詰襟を着た少年である。
その眼鏡の奥で、漆黒からネオンの渦へ続くグラデーションの中に『落ちていく』男の影を見つけ、フェンスを軽く掴んだ。
「蓮亀、ここからいくの?」
蓮亀、と呼ばれた少年の背後には、不可思議な水色の髪をした少年が立ち、それを呼び止めた。
「まだ下にいるみたいだ。今日はまだ早いから、行ってもいいかな」
水色の髪の少年に向き返ると、蓮亀は困ったように笑う。
少年は頷いた。
「うん、いこう」
フェンスを軽々と乗り越えた蓮亀の手を取る。その髪と同じ色の光が二人を包むと、そのまま、手をつないだまま静かに、宙へと足を踏み出した。
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