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1.君の秘密(2)
たまたま近道をしていただけなのに、異常な光景に遭遇してしまった。
早く、病院へ帰らなければならないのに。
驚愕に見開かれた瞳の中には、たったいま目前で空から『降りてきた』ばかりの男が、悪戯な笑みを浮かべて映っている。
「よォ、にいちゃん。こんばんは」
路地裏を歩いていたこちらを狙ったように降りてきたこの男は、目が合うなりヒラヒラと手を振って笑った。
何気なく、不意に見上げた高層ビルの谷間に、その男は降りてきた。
闇の中から、小さな粒が人型になり、みるみる大きくなって、音も無く地に足を着けたのだ。
瞬くような間だった。
「な…あんた…ど、どこから…」
「上だよ、上!このビルの屋上!…おっと、まだ来るぜ?」
親指を上向け、空を指し示す。首を傾げるように上を見て、こちらに向き直る。
「まだくる…?」
問いかけが終わるのが先か、少年が暗闇の中空からストン、と小さな音を立てて降り立った。
「え…え、え!?」
体勢を整えて、少年が胸ポケットから取り出した眼鏡が光る。
「そこにいるのは…町谷さんと…あれ?どなたですか?」
「新顔だよ。さて、坊ちゃんが三人と、もう一人。さて…そんなに睨むなよ、なあ?」
非常事態に巻き込まれた少年は、睨むなよ、と問われても何の事か分からないでいた。
細い路地には六人の人影。だが、少年の正しい視力では三人しかいなかった。
蓮亀には、見えていた。怯える少年の前に立ち塞がる黒髪の青年。
「変だろ?こいつには、このおっかない顔した兄さんが見えてないみたいだぜ?」
「だ、誰が?」
「見えてない…?術士じゃ…あれ?君、霧島くん?」
薄明かりの中、二、三歩と近付くと、蓮亀は驚いたのか若干高い声を上げた。
「なんだ、知り合いか?」
「!!…ま、松前くん…?」
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