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1.君の秘密(3)
驚いた少年は、蓮亀を見て確かに名を呼んだ。
「蓮亀…知っているの?」
綺羅が蓮亀の横顔に問いかける。蓮亀は小さく頷いて霧島と呼んだ少年を見ていた。
「隣のクラスの…生徒だ。だけど、彼は…確か…」
「蓮亀?」
蓮亀の瞳は、眼鏡の奥で少年を見据えていた。その前に、立ちふさがる黒髪の男の姿を見て、首を小さく振る。
「違う、彼は彼じゃない」
「?どういうこと?」
「綺羅、彼には見えていないんだ。彼は術士じゃない。そして僕の知っている霧島くんじゃない」
「え?」
「おいおい、作戦会議は、そのくらいにしてくれるか?」
追われていたはずの町谷は、にやりと薄い笑みを浮かべ手を宙に翳す。その指先から、円陣が現れ、瞬く間に町谷を包んだ。
「いけない、蓮亀、『彼』を呼ぶつもりだ」
真白の光の中に、町谷とは別の人影がもう一つ、現れ、それは蓮亀の方へ動いた。
影のような姿は、蓮亀の真正面にあっという間に距離を縮めた。
「蓮亀!」
綺羅が蓮亀の前に立ちふさがり、影へと手を伸ばす。
水色の火花の様な閃光が辺りに飛散し、空気が斬り裂ける音が響く。
蓮亀は盾となった綺羅の背後で拳を握ると、その指と指の隙間から光が滴り、滴った光によって蓮亀の足元に円陣が現れた。
「ありがとう綺羅」
蓮亀の片手に開いた革表紙の本が風によって煽られ頁が捲くられていく。足元の光の円陣は更に光を増した。
蓮亀は、綺羅の水色の髪越しに、現れた男を見ていた。
「ご無沙汰しています、アルドさん」
眼鏡の奥の瞳には、銀髪の男が映っていた。
アルド、と呼ばれた銀髪の男は、濃い青色の瞳を細め、躱された一撃の次を繰り出そうとしていた。
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