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1.君の秘密(4)
「綺羅、よけて!」
瞬間、綺羅の姿が水柱を崩したように消失する。
振り被ったアルドの爪が、蓮亀の頬を狙っていた。
蓮亀は避けること無くその爪を見据えていた。蓮亀の足元から水色の光を放つ水柱が吹き上がる。
アルドの腕は水柱を突いたものの、蓮亀の顔面を捉えることなく瞬時にその身を翻した。
「…だめか」
一言、苦笑を零して、蓮亀は眼鏡を持ち上げた。
見動くこともない蓮亀の前から、アルドは引き下がる。
その片腕には、水色の光が絡みつき、時折火花が弾けていた。
「アルド、その腕はもう使えんな」
闇の中から、頭を掻きながら町谷が呼びかける。
「相変わらず可愛げの無い術を使いやがる。このガキが」
唾を吐き捨てながら、町谷は蓮亀を睨みつけた。
「あと少しだったんですが、さすがですね」
蓮亀の背後に、綺羅が姿を現す。
「このくらいでは、牙族の方を止められないので、今は僕のピンチなのは変わらないんですけどね」
「ハッ、言うね」
町谷と蓮亀の間で、無言のままアルドは光が絡まったままの腕を、力無く下ろしていた。その青い目を火花が掠める。
アルドは、己の肩を掴むと、引き剥がすように腕を引きちぎった。
千切れた腕を傍らに放り投げると、地に落ちる前に腕は白い光となって消えた。
蓮亀はアルドを見ていた。腕は、元通りになっていた。
「これでも会心の一撃だったんですけどね」
困ったように肩を竦め、蓮亀はため息を吐く。
その蓮亀の前から、アルドの姿が透けるように消えていく。
「どこにいくんですか?」
町谷は、背後を親指で指し示し、首を傾げた。
「坊や、もうひとりを忘れてないか?」
「!」
そこには、強張った表情の少年が、立ち竦んでいた。自分へと矛先が向けられたことに、少年は気付いたようだった。
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