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1.君の秘密(7)

 全身を打ち付けられる衝撃とともに、綺羅は押さえつけられていることに気付いた。  強かに打ったためか、視界が昏んだ。眼の前に、何か光るのもが揺れている。  アルドの銀の髪だった。見上げれば、静かに青の瞳が見下ろしている。 「…っ、離してください」  綺羅は藻掻くが、すでに押さえつけた身体を退かすことは体格差でも無理だった。  召喚された者同士、術士の命令外で傷付け合うことはまず無い。これは時間稼ぎに過ぎなかった。  不意に、アルドの指が綺羅の顎を掴んだ。 「!」  しまった、と思ったときには遅かった。  アルドの唇が、綺羅の唇を塞いだ。 「…ふっ、…ーーーーーーー!」  綺羅は、塞がれ声にならぬまま、悲鳴を上げた。  意識が混濁する。  吸い上げられる息が、全身から力が、抜けていく。 「ん…、ぁ…」    かくりと、膝が落ちる。唇が僅かに離れたその後を追うようにアルドの唇が執拗に綺羅の唇を塞ぐ。  抵抗する力も、すでに奪われていた。  目を開けば、青い瞳が間近に見えた。 「盛り上がってるようだぜ、水色の坊やは。なあ?どうする?」  背後で町谷が笑うのを他所に、蓮亀は薄れていく綺羅の光を見ていた。  召喚された者は『実体』を保つことに余計なエネルギーを要する。  綺羅も例外ではない。綺羅の場合、死んでいく術士の最後の生命を搾取する形でエネルギーを保っていた。  そのエネルギーを充填する方法は数少ない。最も簡単な方法は、他の召喚されたエネルギー体を捕まえ、奪えばいいのだ。 「おい?シカトかよ!」  町谷の問に、蓮亀はゆっくりと振り返る。 「時間稼ぎにはなりましたか?」 「ああ、あいつも丁度電池切れだったらしい。自分から獲りにいくなんて珍しいことをする」 「そうですか。では、次の準備はできたんですね」 「次?」 「ええ」  返事をした蓮亀の傍らを、何か、黒い影がすり抜けた。  蓮亀は眼鏡の奥でその何かを捉えていた。それは真っ直ぐに町谷へと向いていた。 「彼の、主ですよ」  町谷が気付き、防御の姿勢を取る。

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