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第1話

「…ねえ、今日も一緒に寝ちゃ駄目なの?」 今夜も、ドアの隙間から顔を出して蓮が聞いてくる。 「駄目です」 いつもなら聞き分けがよくそれで顔を引っ込めてくれるのに、今回はいつまでもドアのところで恨めしげに俺を見ている。 (…ああ……何故、ドアに鍵がついていないんだ………) 俺は今回、何度目かの溜め息を吐く。 -ここは金持ちの息子が通う全寮制のエリート校として有名な学園だ。 クラスは、金持ちで成績のいいAクラス、金持ちだけど成績が悪いBクラス、AクラスとBクラスの使用人ばかりのCクラス、成績はいいけど奨学金をもらっているDクラスに分けられている。 どのクラスに入っているかで授業料も違うし、寮も違う。 もちろん、蓮はAクラスで俺はCクラスだ。 AクラスとBクラスの生徒は1人だけ同年代の使用人を連れてきていい事になっている。 その使用人は成績に関係なく必然的に、Cクラスに入れられる。 寮では主人と使用人は、同じ部屋。 同じ部屋とはいっても、主人と使用人だから当然、ベッドを並べてというわけにはいかない。 主人の部屋はひとり部屋だ。 そして、主人の部屋の奥にあるドア。 主人の部屋に比べたら、3分の1くらいしか広さがない部屋。 そこが使用人の部屋になる。 使用人の方から主人の方へは鍵がかけられるので自由に入る事はできないが、主人の方から使用人の部屋は鍵がないので自由に出入りができる。 つまり、蓮の方から俺の部屋へは出入り自由。 だが、主人はあまり使用人の部屋へ入り浸るものじゃない。 蓮も今まではドアを勝手に開けるような事はなかった。 今、蓮はドアを開けて俺を見ている。 それでも、遠慮があるのか部屋の中までは入ってこない。 ドアを開けて、隙間から覗いている。 「………どうしたの?……おかしいよ、遥香」

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