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第4話

『もう!ケンジったら!早くしなさいよ!』 瞳に星が3個ある女の子が主人公に激をとばす。 そうそうこの後崖から飛び降りるんだよなあと思いながら深山は液晶を見つめた。 批評会から数日後、橋田はなにを思ったのかこのDVDをわざわざ自宅から持ってきて深山に押し付けてきた。 押しの強さに負けて受け取ってしまいこうして休日の昼下がりをアニメ鑑賞に消費している。 はじめは少し面倒だったが昔ハマっていただけあり一度見たアニメでも時間を置いて見ると新鮮で、見入ってしまった。 そうしているうちについつい一度に借りた分を制覇してしまった。 気づけば日は沈みとっぷりと夜も更けている。 深山はメッセージアプリを立ち上げると橋田に『今見終わった。やっぱもえぽよ最高』 と送った。すぐさま既読がつく。 『二期もあるから貸すわ』 早々に来た返信にどんだけだよと苦笑する。 深山はそのまま、『よろしく!!』と書かれたスタンプを送った。 二期も借りる羽目になってしまった。 流されやすいのも問題だよなぁとは思う。 橋田のことは未だによくわからない奴だとは思っているが、こうぐいぐい来られるとつい付き合ってしまってしまう自分がいる。 あの陳腐極まりない自分の小説を好きだと言ったまっすぐな瞳を思い出すと心がざわざわとする。嬉しいような、怒りのような。 最近やけに橋田のことを考えている気がした。 (これも一種の現実逃避だよな) 竹本の顔がよぎって深山は顔をしかめた。あれから竹本はどこかそっけない。お互いもう二十歳を超えた大人だからか、そこまで露骨と言う訳でもないのだが以前のような親しみをまったく感じなかった。 こういうとき、深山は他の人間ならどうするのだろうと考えることにしている。 仮に相談したら、どう返す? 稲村ならば、さっさと諦めて次に行けとでもいうのだろう。 それが出来たらとっくにそうしていると脳内の稲村を小突いた。斉木はどうせ困ったように笑って終わりだ。 橋田だったら、そう考えてはてと思考が止まる。真面目なスポーツマンを具現化した橋田のような人間とは今まであまり深く付き合ったことがなかった。 したがって、脳内問答の答えを見出すことができない。まったく見当がつかないのだ。 もし、相談してみたら何かいい案を聞くことができるかもしれない。 深山はDVDを取り出すと一人で頷いた。 明日橋田に相談してみよう。 あいつはきっとモテてるだろうから、女子について幾分か学べることがあるだろう。 「頼んだぞ、橋田…」 深山はひとりごちるとインスタントラーメンを茹でるべく立ち上がるのだった。

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