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第2話

「んっ、っひぅ……」  心は悲鳴を上げているのに躰は喜々として彼を受け入れる。  エメラルドの目に涙が浮かび、頬を伝って流れていく。この涙はいったい何だろう。  フィーユはいやいやを繰り返すその度に、プラチナブロンドが目の端で揺れる。 (もう嫌だ!)  彼から身を守るため、フィーユは躰を丸めた。  しかしそれは逆効果だった。逞しい腕が伸びてくる。逃げるフィーユの腰を手繰り寄せた。 「っあっ!!」  あまりの強烈な刺激により、喘ぐことさえもできない。  彼との接合がより深まる。楔がさらに最奥へと刻まれた。  そして彼は、獣のように低く呻き、焼き付くような熱を一滴も余すことなくフィーユの最奥目掛けて注ぎ込む。 「っひ、あああっ!」  飲み込めなくなった唾液と涙。そして自らの陰茎から吐き出される白濁が乱れに乱れたシーツを汚していく。まるで、過去の記憶を塗り替えていくように――。  何故こうなってしまったのだろう。  彼とはフェアな関係だと思っていた。  まさかこんなことになろうとは、露ほどにも思わなかった。 『人が傷つく戦だけはしたくない』 『私も常々そう思っております』  それは過去。幾度となく対話を繰り返し、語り合った記憶。   それなのに――。  彼は裏切り、奇襲を仕掛けて両親の命を奪った。  これは仕方のないこと。彼は所詮、対立する隣国の将軍――ただそれだけの話だ。  フィーユは絶望を胸に宿し、やがて押し寄せてくる虚無の世界へ包まれた。

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