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第7話
突然の怒号が辺りを振るわせた。
けっして痩せているとは言い難いほどの豊かな躰。襟足までの白髪は後ろに撫でつけている。髪と動揺に白い口髭は威厳を感じさせた。彼こそがグレファ王。バスティーザ国を滅ぼした王その人だった。
「……グレファ王」
いつの間に目を覚ましたのだろう。キュロスは椅子から立ち上がり、胸元に手を当てている。
表情には先ほどまであった苦難はどこにも見当たらない。あるのは威厳に満ちた姿だけだ。
「そこの王子は降服よりも死を選んだとお前から報告があったからこそ、手籠めにすることを断念したというに……」
そこまで言うと、グレファ王は寝台に横たわるフィーユを眼に写した。
彼は口髭を指で伸ばし、垂れ気味の灰色をした丸い目が乱れた寝衣姿のフィーユを舐め回す。それからにたりと笑みを浮かべたかと思えば、フィーユの細い腕を手に取った。
「まあ良い。今からでもたっぷり可愛がってやろうかのう」
寝衣の合わせ目から覗くツンと尖った赤い蕾を見た彼は舌なめずりをした。
今度はこの王に抱かれる。
そう思うと、生理的な嫌悪感がフィーユを襲う。
「っ、嫌だっ!」
今まではたとえ相手が敵国の将軍であったとしても慕情を抱いたキュロスだからこそ許せた部分もあった。しかしこの王は――。フィーユは生理的にこのグレファ王を受け付けない。
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