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第11話

「さあ、お前は永遠に儂の元で(かしず)かせてやるわ」  薄気味悪い笑い声がフィーユを陥れる。  フィーユは唇を引き結ぶ。キュロスとはもう二度と会えないかもしれない。これから後のことを思うと胸が苦しい。胸が張り裂けそうだ。  しかし、グレファ王の角笛に飛竜が応えることはなかった。 「遅くなり申し訳ありません! キュロス様、ようやく見つけました!!」  その声は遙か頭上。  飛竜よりも一回りも二回りもある大きな躰。  紅蓮の炎を思わせる赤の鱗を持つ一匹の竜だ。  上空の彼方から一匹の竜の影が覆っている。  それは息を呑む早さだった。意表を突いた竜の出現を合図に、キュロスはひと息に腰から剣を抜く。グレファ王へ詰め寄ると一気に間合いを詰めた。  フィーユは彼のたくましい胸元へ引き寄せられる。そうかと思えば、キュロスはグレファ王の喉元へと切っ先を突きつけた。もはやグレファ王に勝機はない。  周囲からは歓喜の声が上がる。 「その者を地下牢へ!」  兵士たち数人はグレファ王に縄を掛け、キュロスの意向をうけた。 「皆、よくやってくれた」  キュロスは兵士たちに労いの言葉を掛ける中、フィーユは自分の目の前にいるそれが信じられなかった。 「あれは……伝説の火竜?」  何度も瞬きを繰り返し、今着地したばかりの巨大な竜を見上げる。

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