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第12話

 ――我、幻の火竜也。我を味方にせし者、国の救済す。――  これはたしか、長きにわたる竜の国の言い伝えだった。  これは伝説は伝説として語り継がれるばかりだ。それを実際にいると信じる者は殆どおらず、皆がただのお伽噺だと思っていた。  しかし、どうやらこの将軍だけは違っていたようだ。彼はいったいどれほどの時間と手間を惜しみ、この火竜を探していたのだろうか。 「さあ、我が主よ。火竜と共に玉座へ」 「えっ?」  フィーユは驚きの声を上げた。まさか自分が火竜と共に行く者だとは思ってもいなかったからだ。  玉座は自分ではなく、キュロスにこそ相応しい。  フィーユが戸惑いを隠せない中、キュロスは足下に跪く。 「キュ……」 「キュロス! 貴様、主たるこの儂を裏切るのか!!」  兵士に連れ去られながらもグレファ王は怒鳴り続ける。兵士はグレファ王の背を押し、引き摺り下ろしていく。やがて姿は見えなくなり、喚き声も届かない。  今、ここにあるのは無限に広がる青空と風の音。そして、フィーユとキュロスを見守る兵士たちの熱が隠った視線ばかりだ。 「どう、して?」  キュロスは敵国だ。それなのに何故、彼は足下へ(ひざまず)くのだろうか?

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