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第13話
「こうでもしなければ、グレファ王に狙われた貴方を守ることができないと思った……いや、これはただの詭弁だな。私は貴方に慕情を抱いていた。グレファ王が貴方以外のバスティーザを名乗る一族殺害を命じた。すべては貴方を自分の所有物にするために。しかし私は、グレファ王の手によって貴方が奪われてしまうのならいっその事自分のものにしてしまいたいと思った。貴方の両親を殺しても――」
(父上、母上――)
キュロスの言葉にフィーユは胸が痛くなるのを感じた。
キュロスが両親を死へと追いやった。その事実が苦しく、とても悲しい。
胸の前で拳を握り締める。
フィーユの視線が足の爪先へと向かう。
「やはりキュロス。貴方が父上と母上を――」
フィーユの唇が重々しく開く。
胸が氷のつぶてに覆われ、冷たく凍えていくのが判る。
両親の死に様を想像するだけでも胸が痛い。
「いいえ、それは違います! 王と王妃は自らの命と引き替えに貴方様を助けてくれるよう懇願し、この世を絶たれました。キュロス様は王と王妃の願いをくみ取り、すべては王子をお守りするために――キュロス様はあれからずっと血を吐く思いで伝説の火竜を探しておいででした!!」
一人の兵士が声を上げた。
それは信じ難い――いや、フィーユにとって望ましい言葉だった。
(それは本当?)
本当ならばどんなにいいだろう。
フィーユの視線が再びキュロスへと向く。
期待と不安を抱きながら、彼を見やる。
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