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第14話

「いいや。それでも貴方様を抱かずとも済んだこと。私が貴方を欲したのは事実。今さら弁解はしません。私の処置は貴方様のお好きなままに――」 (ああ、キュロス)  嫌えたらどんなに良かっただろう。 (そんなこと、出来る筈がない)  だって無理矢理抱かれても、それでもフィーユの心は彼にあるのだ。どんなに憎もうとも憎みきれなかった。 「キュロス、お願い、俺の側にいて。離さないで」  フィーユの言葉に、彼は信じられないとばかりに大きく眼を開け、フィーユを見上げた。  しかしフィーユこそが彼に慕情を抱いていることを知らなかった。  キュロスは自分が無理矢理組み敷いた。憎悪を抱かれていると思っているのだろう。  ところがフィーユは違う。無理矢理組み敷かれ、抱かれ続けられても慕情は少しも変わらない。――いや、それどころか増す一方だ。  だって彼は誰しもが伝説だと疑った寓話を真実だと信じ続け、火竜の存在をここに知らしめた。すべてはフィーユを竜の国の王にするために――。何より、グレファ王の手から守るために――。  それだけ、自分はキュロスに愛されている。彼の真意を知ったからこそ、素直になれる。 「貴方を愛しています。だから、側にいて……」  フィーユの真摯な眼差しに嘘偽りがないと感じたのだろう、キュロスは静かに微笑を漏らす。 「仰せのままに。我が主よ」  バスティーザ。そこは伝説の火竜と確固たる信念を持つ将軍に愛されし王が治める国。  ――Fin――

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