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番外編:兵士たちの、そこはかとない日常。

『キュロスは無表情で何を考えているか判らないから困る』  それは現在の王、フィーユ・バスティーザの言葉だ。しかしそれは否――である。そう断言できる者が多数いた。これはそんな者たちのほんの日常的な会話である。  それは王族たちの集会が始まりを告げるほんのひとコマの出来事。兵士たちは門からバスティーザ城に向かって長い列を成し、他国の王たちを歓迎していた。  角笛がどこまでも広がる青空と悠久の大地に広がり木霊する。兵士たちは胸に手を当て、王族を出迎える。  鳥が囀り、時折強い風が吹く。その風が、このバスティーザ平原一面を淡紅色で彩るダマスクローズの華やかな香りを運んでくる。  城の入口の階段に、心優しき王と、そして傍らには王を守る威厳に満ちた将軍キュロスの姿がある。 兵士A「ああ、やっぱフィーユ王は美しいな』 兵士B「だよなあ、グレファ王につかなくて良かったぜ」 兵士C「おい、滅多なことを言うな! キュロス様に聞こえるぞ」 兵士A「何を言っちゃいけないんだ? グレファ王につかなくて良かったという話か?」 兵士C「違う! フィーユ王の容姿の話だ!」 兵士B「何故褒めてはならんのだ? 別に悪口ではないだろう?」 兵士C「お前は馬鹿か? 見ろ! あの将軍キュロス様の表情を!!」 兵士B「眉間にふっか~い皺ができてる。口角は下がりきって――すごい形相だぞ。まるで鬼だ」

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