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第2話
10人程が乗り込める飛行機。機内には操縦士と案内人。
それに昨日まで明慈大学の研究生だった一条の3人が乗っていた。
というのも、一条が大学へ通う為に借りている部屋のポストへ封筒が届いていたからだった。
『この度、数々の優秀有能な学者が
蘭・L・一国氏の助手候補生として
名乗りを上げましたが、
厳正な学術試験及び適正試験の結果、
貴方を助手として選考することに
致しました』
その文面にもあった通り、一流の大学を出て、優れた論文を何本も世に出している生物学者。有名な製薬会社の第一研究室に勤めていて、有益な特許申請を成している研究者等々。
国内外から蘭博士の助手となるべく一条と同じ試験を受けた。
植物学または薬学。それに準じた学問を修めた学部卒生であれば一応は性別、年齢、経歴を問わず誰でも応募ができるものの、一条のように特にこれと言って輝かしい学歴や職歴を持たずして受けた者は一握りだった。
だから、一条を含め、一条が蘭のたった1人の助手として選考された事は衝撃が走った。
「なぁ、どんな返しであのムカつくおっさんにかましてやった訳?」
一条と同じく、試験を受けた芹澤(せりざわ)も聞いてくる。正直、学術試験と称された筆記試験や口頭試問はところどころ解答につまり、ガタガタだった筈だ。しかし、それ以上に適正試験はガタガタ以前の問題だった。
「一条君、体が震えているようだが、体調でも悪いのかね?」
等と、試験中に聞いてきた試験官は鋭い視線を一条に向けた。
「い、いえ。だ、大丈夫、です。何でも、ありません」
一条は何とか、試験官に怪しまれないように繕った。だが、その一方では何故か、股間を膨らませてしまい、試験中だというのに一刻も早くトイレに駆け込みたかったのだ。
「まぁ、何でもいいか。植物学界の若きアインシュタインの助手の仕事は気になるけど、俺は最悪、親父のコネとか何でも使って、就職するしさ」
お前も頑張れよ、と、にやっと笑う芹澤は実は一条と同じゼミ室の学生で、歴代のゼミ生の中でも特に優秀な学生だった。
そんな優秀な芹澤でさえも選考試験に落ち、自分が選考された理由が分からないと思うと、一条は荷物をまとめて、蘭のいる島へ向かった。
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