5 / 13

第5話

「うっ」  一条は小さく呻くと、全身に怠さを覚えながらも身体を起こした。  真っ白な部屋の真っ白なベッドの上から降りると、辺りには無数のガラスケースが並べられてある。その中の殆どには青白い花が咲いていた。 「もしかして、これ、全部……」 「そう。全部、バニラ・クピディタスの花」  一条は声の聞こえた方へ振り替えると、そこには1人の男が立っていた。  真っ白な白衣に身を包み肌と髪も雪か何かを纏ったように白い。だけど、その瞳は彼が持つ全ての黒を背負ったように黒く澄んでいた。 「あ、あららぎ博士っ!!」 「うん、蘭ですけど」 「あ……」  一条は名乗るべきなのか、醜態を晒したのを詫びるべきなのか、と思い、それ以上、何も言えずにいた。  だが、いつまでもそのままという訳にはいかない。 「どうもすみませんでした!!」  一条は名乗るよりも蘭に詫びるべく頭を下げると、蘭も狼狽え出す。 「ええ、何。何!! 俺、何かしたの!? 何かしたのか!?」  蘭は頭を抱えると、白衣が皺になるのも厭わず床へ座り込んでしまった。画面の中ではクールに英語で自身の研究について語っていたイメージだったので、一条は驚いた。  ただ、本来、焦るべきである自分よりも蘭が焦っているので、不思議と一条は落ち着きを取り戻していた。 「あの、博士。どうか顔を上げてください」 「え……」 「博士は何もしていないんです。その、何かをしてしまったのは僕なんです」

ともだちにシェアしよう!