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9.逃走

なんとか外してもらえた鎖は、床に大きな音を立てて落ちた。 俺を拘束するものはもう無い。つまり、今なら逃げられるということだ。 こんなチャンスを逃してたまるか。 バレないようにゆっくりと扉の方へと足を進める。 少しずつ慎重に。そしてある程度まで行った瞬間、俺は走った。 ドアノブに手をかけ、出られると思った。 しかしその時にはもう、鬼のような顔をしたやつが俺の後ろで微笑んでいたんだ。 お前を逃がさないと言いたげな顔で。 「私も、そろそろ本気を出した方がいいですかね?」 「…………っ。」 恐怖から声も出ない。 震える身体も止まらない。 そんな俺の身体を抱きしめてきたのはこいつで。 俺を苦しめるのもこいつな訳で。 「楽しみましょう。お仕置きタイムを。」

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