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それから映画の撮影が開始して最初は上手くいかなかった俺だけど、主役のタカヒロくんや塁くんのおかげもあって演技力が上達し、クランクアップの前では1発OKをもらえるほどまでになった。監督さんがこのまま次の映画にも出ないか?と声をかけてくれたんだけど、しばらく仕事しないことを伝えると残念がっていたなぁ。 「本当にここまででいいの?見送り」 「うん。ごめんね、林さん。こんなところまで送ってもらっちゃって」 ちなみに仕事をしばらく休みたいと言った俺に林さんも社長もいいよって言ってくれた。2人も俺の将来的に高校卒業は絶対だって思っててくれたみたいで、今の状況だと難しいし両立が出来ないのは目に見えているからひとまず活動休止という形で発表してくれるそうだ。 「それにしてもヨウのその髪色見慣れないね」 「そうでしょ?」 モデルの頃は俺のイメージ作りとして髪の毛を金髪にしていたんだけど、もうそれもおしまい。母さんの前の旦那さんがハーフだったみたいでその血を受け継いだのか本来の髪色は薄い茶色なのだ。もちろん、ブリーチをしていたからこの茶色も染めてはいるんだけど。 「卒業したらすぐに林さんに連絡するから、それまで俺のマネージャーやめないでね」 「はいはい。ほら、早くしないと遅刻するよ」 「はーい。じゃあね、林さん!また連絡するねー!」 高等部の校門まで送ってくれた林さんには感謝だ。1番最寄りのバス停から高等部の校門まで歩いて1時間近くかかる。さすがにそんなに歩くのは俺でもしんどい。林さんに泣きついて正解だった。 「転校生の原田だよな?」 「はい、えっと·····」 「担任の猿谷だ。よろしくな!」 正面玄関に教師が立っていたのだがまさかの担任。ずっと待っていてくれていたみたいだ。ちょっとゴリラっぽいけどいい先生なのかな?たぶん。

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