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ぽっと出の転校生に、みんなを盗られちゃった勝手な八つ当たりで、ゆきちゃんを傷つけちゃうのに。そんな身勝手な俺にゆきちゃんは泣きそうな顔をして謝ってくるんだ、絶対に。 「ゆきちゃんはそんなことしなくてもいいんだよ」 だから俺は生徒会室からゆきちゃんを追い出す。ゆきちゃんに変な言いがかりをつけないためにも。 とりあえずちょっとトイレにでも行こっかなとドアを開けた瞬間に人とぶつかった。パッと顔をあげればここにいたのはよく知っている人である。 「は?え?東野(とうの)はどうした」 「会長ならいないよー」 「あぁ、そうか。ってお前誰だよ!」 「羊だよ、はるちゃん」 そこにいたのは生徒会の顧問であり保健室の先生をしている中野(なかの)晴也(はるや)。貧血気味の俺はよく保健室のベッドにお世話になっていたっけなー。 「羊?中町羊か?!」 「今は原田だけどね」 「なんて言うことだ、天使がただのチャラ男に」 失礼な。今も天使だよ。ってそんなことはどうでもよくて。 「何しに来たの?保健室から出てくるなんて珍しいよね」 「あぁ、最近仕事をしていないって噂で聞いたから事実確認をだな」 「あー」 「その様子じゃあ仕事はお前がやっていたってかんじだな」 「内緒にしててね」 会長達に生徒会をやめてほしいわけじゃないから。やめてほしかったら仕事なんてしないし、それこそどうにでもなれば?って思っちゃう。一応今でも会長達のこと好きだし、あんなモジャにベッタリだけど中等部の頃はたくさん面倒を見てもらってたから、恩返し的な? 「あれ、俺ってすごく健気じゃない?」 「久しぶりに会ったけどお前の思考回路がバグってるのが変わってなくて安心したわ」 「ちょっと、人の事悪く言うのやめてくんない?!」

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