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30 小町side
転校してすぐに授業に出なくなった羊くんと、羊くんのそばにいる書記の相田 剣一 様を見てなんとなく気がついてた。もしかしたら羊くんは中町様なんじゃないのかなって。その疑問が確信に変わったのはついさっきのことだったけど。
とても驚いた。中等部にいたころは誰よりも可愛らしかった中町様が今ではこんなに綺麗になって。
「貧血は、親からの遺伝……。過労はね、つい最近までモデルしてて仕事が忙しかったんだだから……」
当時中町様の親衛隊隊長だった僕は悲しかった。それは僕に何の相談もなしに中町様は転校してしまったからである。そんなに信用がなかったのかって落ち込んだり、悩んでいたであろう中町様になんで気付けなかったのかと何度自己嫌悪したか。
それでも中町様は帰ってくるって僕を始め親衛隊のみんなは信じてたから今でも中町様の親衛隊は解散していないし、僕も隊長を続けている。
当時の生徒会の中心は会長様でも副会長様でもなく、中町様だった。初等部からの幼馴染みとはいえ、性格や考え方が全く合わずバラバラだった生徒会をまとめたのは中町様だ。
生徒会とか親衛隊とか立場なんて気にせず仲良くしてくれた中町様だったから、僕らは中町様が帰ってくるのを待っていたんだ。なのに今の会計の席にいるのはあの自分勝手な正義をかざしてくるアイツ、八雲 遥葉。
そこにいてもいいのは中町様だけなんだと何度言いそうになったことか。でも、中町様は争いごとを酷く嫌っていたし、隊長である僕が一度でも八雲に言い寄ってしまえば、隊員の不満を抑えきれず、学園内が崩壊してしまう。そう思った。
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