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その4 花嫁な僕と、花婿な吸血鬼
早いもので、結婚式の日がやって来た。
痩せるのは止めると言ったものの、食生活を変えたことで、実は地味に5キロほど痩せた。
元の体重がそこそこある上、オスカーと毎日一緒に生活をしている事もあり、僕の変化には気づかれてはいないらしい。
微妙に痩せたことで、良い感じに身体も軽くなった事もあり、余計な波風を立てない為に、今後も秘密にしようと思う。
「可愛いぞ、ジョン」
長めの黒髪をオールバックにし、豪奢な正装に身を包んだオスカーは、この世のものとは思えないカッコ良さだった。
対する僕の格好は、だぼっとしたタイプの白のドレスだった。
レースがふんだんに使われており、縁取りには僕の好きな花の刺繍が施されている。
スカート部分はかなりのボリュームになったデザインは、僕のお気に入りだ。
ちなみに、狼の時用のドレスも同じデザインになっている。
「オスカーもすごくかっこいいよ」
結婚する段階になって嫌になってしまう花嫁が居るのだと、オスカーは最近までずっと心配していた。
けれど、それは全くの杞憂であり、結婚式が近づくたびに、僕は楽しみで楽しみで仕方がなかった。
僕の心は、出会った当初は戸惑い、けれどかつての友人だっと知って友愛を感じ、そして一緒にいる内に愛情になった。
一緒に過ごす内、かっこいい所や優しいところ以外の、情けない所とかも知ったけれど、そう言った所も大好きなんだ。
神父様によって人狼族の結婚式の時と同じ誓いの言葉が紡がれていく。
吸血鬼なのに、人狼と同じなんだ、と言ったら、妻になる人の種族に合わせるんだって。
吸血鬼には宗派とかは特になくて、自然の神様を祭ってると聞いて少し驚いちゃった。
でも、僕は結婚式には強い憧れがあったから、これはすごく嬉しかった。
しかも、もう一つ嬉しい事があって、オスカーは僕の故郷から家族を呼んでくれたんだ。
両親に、姉夫婦、弟、僕が家を出た後に生まれた双子の兄妹が、参列してくれた。
家族は、僕の顛末を聞いてすごく怒っていた。
距離が離れているのを良い事に、リッカルドは僕とはうまくやってると手紙を出していたんだって。
なのに、気づけば吸血鬼と結婚する事になって、驚いたし、正直、戸惑ったらしい。
でも、オスカーの話から僕の事を大切に思ってくれているのが分かったって言って、僕たちの事を認めてくれたんだ。
吸血鬼が冷酷っていう噂は、本当にあてにならないなって、皆と笑ったんだ。
僕とオスカーの結婚を切欠に、僕の故郷の里とは交流が生まれるだろうって言われているみたい。
本当にそうなったら良いなって、思ったよ。
「では、指輪の交換を」
神父様の言葉で、指輪を交換をする。
左手の薬指にはまった指輪は、ピンク色の淡い宝石で、僕の為に作られた魔法の石なんだ。
僕を守ってくれるんだって。
勿論、オスカーも同じものをはめている。
たとえ、離れても僕と一緒にいられるように。
ベールをそっと取られて、オスカーの優しい口づけが降ってくるのを感じる。
僕はそっと目を閉じて、オスカーを受け入れた。
暖かい拍手に包まれながら、僕は今日と言う幸せをかみしめた。
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