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第6話

「そうくん。だーれ?」 返事が出来ずに固まっていると、蒼史郎に抱っこされた男の子が、不思議そうに見比べながら問いかけてきた。 「ん? あー。俺の昔の友達だよ。同級生、な」 「……どうきゅうせい?」 「そ。おまえ、もうすぐ学校に行くだろ? その時に同じクラスになる友だちな。わかるか?」 男の子はうーん……と首を傾げて 「……友だち。ようちえんの、なおくんとか、かずきくんみたいな?」 蒼史郎は、男の子をそっと床におろすと、頭をわしゃわしゃと撫でて 「うん、そうだ。おまえとなおくんみたいにな、俺とこいつも、友だちだったんだよ、昔」 「ふーん」 男の子はまだ不思議そうな顔のまま、自分と蒼史朗の顔を見比べた。 ……友だち。同級生……か。 たしかに蒼史朗の言う通りだ。 自分と蒼は小学、中学、高校と、同じ学校に通った友だちで、家が近所の幼馴染みでもあった。 親友……だったのだ。 少なくとも、蒼史朗は自分のことをそう周りに紹介していたし、心からそう思っていてくれていたと思う。 自分だって、あの時までは、ずっとそう思っていた。誰よりも大切な、親友だと。 「なあ、あや。おまえ今、この辺に住んでいるのか?」 長身の身体を少し屈めて男の子と話していた蒼史朗が、不意に身を起こし、真っ直ぐこちらを向いて問いかけてきた。 綾はドキッとして、でも咄嗟には答えられず、口をもごもご動かす。 向けられる視線の優しさが、何の躊躇いもなくあの頃と同じように話しかけてくれる声が、嬉しいのに後ろめたい。 「ぁ、あの」 蒼史朗は、ゆっくりとこちらに向かって歩き始めた。 綾は口を噤み、じり……じり……と後ずさる。

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