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第7話

屈託のない笑顔で近づいてくる蒼史郎から、綾は慌てて目を逸らし、じりじりと後ずさった。 「あれ?……おまえ、あや……だよな?」 問いかけにまともに応じることも出来ずにいる自分の態度に、奏史郎は怪訝そうに眉を寄せ、首を傾げる。 ……ばか。落ち着けって。こんな態度、変に思われるだろう。蒼は、何も知らない。何も分かってないんだから。 綾は自分にそう言い聞かせると、引き攣りそうになるのを堪えて口を開いた。 「あ。ひ、久しぶりだね、蒼……史朗くん。元気に、してた?」 ……しまった。声が変な風に裏返った。 予想外に情けない声が出てしまって、恥ずかしくて泣きたくなった。 数年ぶりに、再会出来たのに。 会いたいけれど会ってはいけないと、ずっと我慢してきたのだ。本当は……もう1度会いたいと思っていたのに。 案の定、蒼史朗は、少し呆気に取られたような目をして、こちらをじっと見つめている。その視線を感じて、綾は恥ずかしさに頬がかーっと熱くなった。 「なんだよ~おまえ。てっきり俺、盛大に人間違えしたかと思ったぜ。いやでもやっぱ、あやだわ。俺のこと、蒼って呼んだもんな」 「あ。……うん」 蒼史朗は楽しそうに笑いながら、会わずにいた数年間の距離をあっさりと超えてくる。そういう彼のあっけらかんとした性格が、苦しいほど好きだった。 ……俺には逆立ちしたって真似は出来ないけど。 「この近くに住んでるのか?」 蒼史朗は同じ質問をしながら、つかつかと歩み寄ってくる。綾は思わず大きく1歩後ろに足を出した。 「あっおい!」 踏みしめた先には床はなかった。ぐらりとバランスを崩して、そのまま仰け反りながら後ろに倒れていく。視界が真っ青な空一色に染まった。 ……あ。まずい……。 まるでスローモーションのようだった。照りつける太陽の光をまともに目にくらって、吸い込まれそうな空の青が一瞬で真っ白に変わる。 ……落ちる……っ

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