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第14話
綾は周にぎこちなく微笑んでみた。
「いいよ、あやって呼んでも。君は俺をからかったりしないからね。特別だよ」
周はぱぁっと弾むような笑顔になって
「うん、ぼく、からかわない。あやくんってなまえ、かっこいい」
「君は、しゅうくんがいいの?」
周は首を横に振ると
「ううん。あやくんなら、ぼくのこと、あまねくんってよんでもいいよ。とくべつ、だよ」
周はふふっと笑いながら、ちょっと得意げに真似してみせる。
綾はつられて笑いだした。
なんて素直で明るい子だろう。子どもの扱いに慣れていない自分でも、あまり緊張せずに話が出来る。
綾はちらっと蒼史朗を見た。
こういうところも、周は昔の蒼史朗にそっくりだ。
視線に気づいた蒼史朗が、にやっと頬を歪めて笑うと
「なんだよ~。2人とも。俺のことは除け者か?ひっでーな」
周は口を尖らせながら、こちらを庇うように両手を広げて
「そうくんは、あやくんをからかったから、なかまはずれです」
「おい。それは誤解だって。俺はあやに意地悪なんかしてねーぞ?ガキの頃はさ、あやを揶揄う他の連中を撃退してやったのになぁ」
弱ったように頭をかく蒼史朗に、周は首を傾げた。
「げきたい…?」
「あまねくん。蒼はね、庇ってくれたんだよ、いつも。いじめっ子から俺を助けてくれたんだ」
わかりやすいようにと、綾がゆっくり説明すると、周は嬉しそうに頷いて
「じゃあ、そうくんも、とくべつ、だね」
両手を広げて、蒼史朗の脚にぽすんっと抱きついていく。蒼史朗は笑いながら、周の身体を受け止めて
「よし。じゃあ俺ら3人は特別ってことだ」
蒼史朗は周の頭をガシガシ撫でながら
「あや。ちょっと立ってみるか?だいぶ顔色良くなってきたよ、おまえ。ここじゃ陽射しがまだキツイからさ、車ん中で休んだ方がいいぜ」
「ぼくね、クーラーつけてきたから。あやくん、こっち、きて」
2人に言われて、綾は恐る恐る首を振ってみた。まだちょっとクラクラするが、さっきよりだいぶマシになっている。
蒼史朗の言う通り、太陽はまだ少し傾きかけたばかりで、ギラギラするようなキツい陽射しが降り注いている。
「うん、ちょっと、待ってね」
綾が両手をついて起き上がろうとすると、すかさず蒼史朗の逞しい腕が伸びてきて、
「脇、支えるからゆっくり立ってみろ。無理すんなよ。ダメなら俺が抱っこして連れてくからな」
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