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第20話

……おむこさん。んーと……。どう説明すればいいんだろ。 綾は絵本から顔をあげて、首を傾げた。 そもそも、小さな子ども相手に本を読んであげるなんて初体験なのだ。どうやっていいのか分からず、たどたどしい読み方になってしまっている。でも周はとても嬉しそうに聴いてくれている。その期待に応えたいと思うのだ。周のガッカリした顔を見るのは嫌だった。 「うーんとね。おむこさんっていうのは、このネズミの夫婦の娘さんの、結婚相手」 「けっこん……あいて?」 「そう。おとなになって、すきなひとといっしょにすむあいて……かな?」 綾の説明に、周は分かったような分からないような、複雑な顔をした。 ……いや。どうしよう。こんな説明じゃ、ダメかな。 綾は焦りながら必死に考えた。 「あ、そうか。あまねくん、きみには、パパとママがいるよね。おむこさんは、パパのことだよ」 ようやく分かりやすい説明を思いつき、ほっとしながらそう言うと、周はますます首を傾げた。 「パパとママ?……ぼくね、パパはいるけど、ママはいないの」 ぽつりと呟く周の言葉に、綾はハッと息を呑む。 ……ママは……いない……?それって…… さっき、蒼史朗に奥さんは家にいるのかと尋ねた時、いないと答えた。 今日は出掛けていていない。そういう意味だと思っていたけれど、もしかしたら違うのか。 そういえば、この家。 いくら空き家だった旧い家に、最近住み始めたばかりとはいっても、家具も内装も置いてある荷物にも、女性がいる気配がなさすぎる。 綾は内心、自分に舌打ちした。 うっかりしていた。こういうデリケートなことは、蒼史朗にもっとキチンと聞いておくべきだった。 蒼史朗の返事を聞いて、勝手に思い込んでしまっていたが、彼の言葉の濁し方にちょっと違和感はあったのだ。 周の視線を痛いほど感じて、綾は思わずキッチンにいる蒼史朗の方に視線を泳がせた。

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