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第25話
「ふぅ……食べすぎちゃったみたいだ」
流しで洗い物を始めた蒼史朗の所に、綾がテーブルから食器を運びながら呟くと、蒼史朗はチラッと横目で見て
「食が細いのも相変わらずか。おまえ、ちょっと華奢過ぎる。身長はあの頃より伸びたけど」
綾は流し台に最後の皿を置くと
「最近、1人で食事することがほとんどだったから。いつもコンビニか外食だしね。はぁ……どれもほんとに美味しかったな。ご馳走様でした」
綾が横に並んで洗い物の手伝いをしようとすると、
「いいよ、俺がやる」
「でも、」
「コーヒーでいいか?紅茶とココアもある」
綾は首を傾げ
「あ……じゃあ、ココア。俺、洗い物するから、蒼史朗はそっちやってよ」
蒼史朗はちろ…っと顔を覗き込んできた。
「食器洗い、出来るのか?」
「そ、それぐらいは俺だって出来るよ」
蒼史朗は少し考えてから、スポンジをひょいっと差し出して
「無理はするなよ。怪我されたら困る」
綾は頷いてスポンジを受け取ると、たどたどしい手つきで大皿を洗い始めた。
蒼史朗は、布巾で濡れた手をぬぐうと、棚から手付きの鍋を取り出して、ココアパウダーを計量スプーンで入れた。気になって横目でちらちら見ていると、それをレンジ台に置いて火をつける。
「え。水とか入れないの?」
「乾煎りして香りを出す」
焦がさないように慎重に鍋を揺する蒼史朗の手慣れた仕草に、綾は感心しながら見とれていた。
鍋からふわっとココアの香りが立ち上る。頃合いを見て、いったん火を止めると、蒼史朗は冷蔵庫から牛乳パックを取り出した。鍋にほんの少しだけ牛乳を加えて、木ベラでかき回し始める。
「ふーん。ココアってそんな風に作るんだ……」
「これは手間を掛けてる。電子レンジで簡単に作る方法もある。後で教えてやるよ」
綾はチラッと蒼史朗の横顔を見た。
食事の時に比べて、蒼史朗の口調が素っ気ない気がする。特に変わったことはなかったはずだ。食事中はずっと和やかな雰囲気だった。
……俺……なんか変なこと、言ったっけ…。
思い返してみるが、覚えがない。
綾は首を傾げ、洗い物の続きに集中した。
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